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【前編】恋愛とセックスのかけ算/33歳 美樹の場合
絵に描いたような嫌な女
見ているだけでその緑の世界に引き込まれてしまいそうな宝石。美樹は宝飾店のショーウインドをずっと見つめている。
新緑の森なのか、神秘の湖なのか、とにかく今、自分が過ごしているビルだらけのグレーな世界とは確実に違う、不安もストレスもない緑一色の世界。取引先とのゴタゴタも、友人へのやっかみも…結婚に対する不安も何もない、透明の空間。しばらく緑の世界にトリップしていた。
「エメラルドがそんなに気に入ってるのかい? もっと小さい石ならプレゼントするよ」
背後から低い声がする。美樹は緑の世界からシュルルっと現実に戻って来た。
「東田さん、もう、びっくりさせないでー」
そろそろ中年太りを気にしても良さそうな恰幅いい体格。鬢に白いものがポツポツ混じってはいるが彫りの深い顔立ちで、余裕がある笑みを浮かべているのでいわゆる新橋系オヤジさんではない。
ゆったりと羽織ったジャケットは決して吊りものではない。身体の寸法を1ミリも妥協せず採寸して仕立てられたもの。
美樹は26歳の頃から東田との甘い関係が続いている。ジュエリーデザイナーとしての一本立ちを目指していたけれど不況と重なり求人があまりない時代だ。
チェーン展開の宝飾店に就職して、さほど高価でもない宝石を「特殊なカットですので、きれいな輝きをはなっています」とありふれた言葉で女性客にすすめていた頃。東田は妻を連れてやってきた。
一目見て傲慢だとわかる意地悪そうな顔をした妻。40代になったら自分の生き様が顔に表れると何かの本で読んだ事がある。東田の妻はまさに人を踏みつけて高笑いしながら生きて来たのだろうと想像できる顔立ちだった。
そして、絵に描いたように嫌な女だった。10種類以上の指輪とネックレスを鏡の前に持って来させ、ひとつずつ丁寧に文句を言った。
そして「この程度のお店じゃ、胸が踊るような石には巡り会えないわあ」とスタッフ達に聞こえるように言い放って店を出た。店長と美樹はあぜんとしながらも、クスっと笑った。笑えるほど徹底した嫌な女だったのだ。
翌日、東田が一人で店に来て、店長と美樹に失礼を詫びた。そして美樹にコッソリ名刺を渡して「仕事の話があるから電話を」と言い残した。
その日からもう7年。美樹はその宝飾店を退職し、友人のヒーリングストーンの店を手伝いながら自宅でジュエリーデザインの仕事をするようになっていた。
東田は美樹にやさしさの限りを尽くした。
毎週一度は美樹のマンションに泊まりにくる。それを理由に光熱費を払わせてくれと月末に札をテーブルの上に置いて帰る。一人暮らしの節約癖が染みついている美樹に少し上の世界を見る事を教え、個室の料亭にも連れて行く。
贅沢な空間で気後れする美樹をいとしいと思うと素直に口に出す。そしてそんな夜は美樹の全身を「かわいい、かわいい」と言いながら長い時間たっぷりと撫で回す。
美樹にとって何番目の男だろうか。前の男たちでは感じた事がない疼きを東田は芽生えさせてくれた。撫でる前に必ず細い鎖のネックレスを美樹に付けさせる。裸の身体にネックレスひとつをアクセントに置くのが好きだと言う。
肉厚でホっとするような暖かい手のひら。その手が肩のあたりをクルクル滑ると、美樹の湿りが始まる。上腕から指先に向かってゆっくり手のひらが降りてくる。指まで降りると一本一本の指をいつくしむように口に含み、味わうように吸い上げる。
あたたかな手のひらは背中に腰に場所をうつしながら遊び回る。腰骨に手が置かれると美樹は必ず「ハン…」という小さな吐息を漏らす。それが遠慮がちでかわいらしいと、東田はいつも褒めてくれる。
ふと美樹は東田と、あの高慢な妻がたわむれている場面を想像する時がある。きっとあの妻は大声で叫ぶにちがいない。
ああしろこうしろと命令するに違いない。恥ずかしさのかけらも見せず本能をさらけ出して吠える無様な妻。いやらしい臭いをベッドに撒き散らす怪獣。きっと東田は嫌気がさしているのだ。
美樹は東田に施しを受けているが、あの妻と東田が絡む姿を想像すると、東田を憫れに思う。そうすることで東田との均衡を保っている。
東田は祖父が立ち上げた絨毯販売の会社を継いでいた。海外のアンティーク家具も扱い始め、みるみる業績を伸ばした。
あの妻は東田の実業家の才覚を若い頃から見抜き、親からもらった結婚支度金を全額、東田の会社に投資したのだ。
おかげで新しい事業が軌道に乗った。東田はあの妻に操をたてなければならないと、古くさい言葉を淡々と発した。
美樹はにっこり微笑み「東田さんの心さえ私の物なら、奥さんのことなんて気にならないわ」と答えた。
幼い後輩

舗装された道に降り注いだ雨がジュワリとと蒸発していると感じる夜。都会で雨の臭いを感じるのはこういう夜しかない。
いつも歩く駅前の道路で季節を感じると同時になぜかしら人恋しさも感じた。東田といるときに感じた事がない気持ち。
新しい石を仕入れに出かけた帰りだった。店員時代の後輩の彩芽とパスタ屋に行く約束をしてつかの間の待ち時間。はじめて東田以外の恋人が欲しいと意識した瞬間。
ビルの3階にあるそれほど広くないパスタ屋。店内まるごと女子会のような勢いで、女性客で華やいでいる。ガーリックをオリーブオイルで炒めた香りが食欲をそそる。
彩芽はレース生地で二枚重ねになっているフレアスカートをはいていた。両肩に白いリボンがのっかっているブラウス。なんとも幼いファッションだと美樹は感じた。
アラビアータをほおばりながら彩芽が言う。
「美樹さん、結婚とかしないんですかあ。アラサーちゃんでしょ。私もあと2年で30だから、マジで結婚相手探してるんです」
「彩芽ちゃん、そんなあせんなくても」
あなただってアラサーのくせにと腹の底で悪態をつきながらも笑って話した。
彩芽は時々、学生のような幼い仕草をする。頬を膨らませて起ったふりをしたり、やたらと手を振ってオーバーリアクションをしたり。そこが鼻につく。
「だって、店に来るお客さんで婚約指輪買いに来たカップル何組見たと思いますう? お幸せにっていう決め台詞、何百回言ったか…。そろそろこっちが言われたいわ」
美樹は納得したというようにうなずいた。
「そうよね。仕事柄、焼きもちやきたくなるわよね。ジュエリーショップはさ」
「そのボンゴレおいしそう、ちょっとください」
彩芽がフォークで美樹の皿を狙い撃ちする。
こんな幼い仕草を世の男どもはかわいいと感じるのだろうか。東田は自分を子供のようでかわいいと褒めるが、美樹からすると彩芽のほがよっぽど子供っぽい。彩芽がどんなセックスをするのか興味がわいてきた。
予想外のお誘い
「彩ちゃん、まえ付き合ってた彼氏とはもう会ってないの? なんで結婚しなかったんだっけ」
「ああ、京平くんですよね。だって派遣ですよー。私、子供ふたり欲しいんです。女の子二人。子供できたら今のジュエリーショップ勤められないから。京平くんのお給料だけじゃ不安ですもん」
「そうかあ。結婚条件考えてふったんだ。でもエッチは? エッチはどうだった?」
彩芽が身を乗り出してきてボリュームを落とした声でささやく。
「それは超いいんです。だから、今でもそれだけはしてるの。彼氏からエッチフレンドに形を変えてもらったの」
美樹は驚くというより、感心した。
「じゃあまわりには彼氏ナシって宣言してるわけね?」
「そうですよ。京平くんのことなんか言わない」
「…で、どんなふうにいいわけ? 京平くんは」
「形がきれいなの。とんがってて。私、お店で社割りでアクセサリー買えるでしょ。ペンダントやブレスレット買ったら、必ず京平君のアソコに飾ってみるの。きれいなんだ」
「へえ、おもしろい」
「でね、カレ、友達カップルとあのときの声を聞き合いながらするのが好きで…」
「はあ? なに?」
「スマホでスピーカーで聞かせあいっこしながらするの」
「ほかのカップルと?」
彩芽がコクンとうなづく。
「ほかの人がする時の声、なまなましくって、すごく燃えるんです。のってくると、ピチョピチョとか聞こえるの。だからこっちもスマホ近づけて挑発するような音出すの」
美樹はあきれたといわんばかりに首を振る。
「彩ちゃん、そんなことしてると結婚相手なかなかできないわよ」
「うん、だからもう京平君とはしないから、ゴーコンして新しい彼氏見つけます。どっかの会社の正社員で、なおかつ濃厚エッチできるカレ。だから、美樹さん、再来週のゴーコン、付き合って参加してください。今日はそのお誘いのためのゴハンなんですよう」
合コンでの出会い
美樹は東田の事を誰にも言っていない。ただ彩芽が彼氏の収入を考えて計算的に別れたように、そろそろ結婚する相手を探さないと、と感じていた。
「そうねー私も彼氏見つけることにするわ。OK、参加する。再来週の金曜日?」と乗り出した。
東田がいるので寂しくはない。すぐに彼氏が欲しいとは思わないが、あの歩道に漂う雨の匂いに気づいたとき、一緒に手をつないで歩ける「誰か」がいればいいと思ったのは確かだった。
オール個室の居酒屋と看板に書いてある。個室とうたってはいるが、間仕切りはついたてに毛が生えたような薄い壁、力を入れると壊れそうな引き戸の個室だった。隣の客の声は丸聞こえ、東田とは絶対に行かないような店。
でももし東田がいない人生を過ごしていたなら、自分の稼ぎではこのくらいの値段の飲み屋でも大きな出費と感じるだろう。合コンとはいえ、男性側が全額出してくれるかどうかは期待できない。
彩芽の専門学校時代の同級生のかわいらしい女の子二人と美樹と総勢4名。男性側は個室の右端に4人かたまって座っていた。浦和にある事務機の会社の社員とその友達という紹介のしかただった。
お互いの自己紹介をしている時、ウーロン割りを飲んでいた川瀬英治と最初の10分で二度、目が合った。英治はおとなしそうなタイプだが、たまにギャグを言って笑いをとっている。
飲み放題のグラスがテーブルに増えたてきた頃、また目が合った。英治は美樹をずっと見つめているのだ。
彩芽がそれに気付き、席替えをした。彩芽のお目当ては事務機の営業マン、シュウだ。あとの女の子二人は「今日はスカ」と目と指で合図を送って来た。
英治はバスケをやっているので体格がいい。目つきはシャープで、ギャグを言っても目は笑っていない。前髪を二本の指でつまんで掻き上げる姿は大人っぽくもあり、無理をして格好をつけているようでもあり、大人と子供のはざまにいる男という感じがした。自己紹介のとき「25歳」と言っていた。
店を出ると、シュウが皆を二次会に誘ったが女の子二人は「疲れたからまたねー」と言ってその場を離れた。わかりやすい女子達だ。
彩芽は英治に耳打ちをしたあと「その場解散」に上手に持って行った。彩芽はちゃっかりシュウと他の店で落ち合う段をつけた。英治には美樹を追いかけて誘うように頼んだのだ。
駅に向かう美樹を英治が追いかけて来た。
「あの、美樹さん、二人で一杯だけ行こうよ。飲み足りないから付き合って」
英治の眼の中にキラキラした光が見えた気がする。顔立ちはきれいだ。雨上がりの道路を一緒に歩くにはいいかもしれない。美樹は断る理由がなかった。
少年のような男
池袋のサンシャイン通りから横にはずれた露地道のビルの二階にあるバー。英治はグラスホッパーというカクテルを頼んだ。
「ふふふ、なんだか女の子みたい。グリーンのソーダなんて」
ジントニックのグラスを傾けながら美樹は笑う。
「わたし、緑色大好き。エメラルドグリーン。そのカクテルもきれいな緑ね」
「美樹ちゃんって呼んでいい? 美樹ちゃんもたのめばよかったのに。これ」
英治が乾杯する仕草をした。
「僕、ずっと美樹ちゃんを見てたんだ。いい感じだなあって。彩ちゃんが、美樹ちゃんのこと僕に猛プッシュしてたの知ってた?」
「うん。あの中で英治くんが一番かっこいいねって合図したから。ま、年はわたしのほうが上なんだけど」
英治が首をかしげて考えるような顔をした。
「年? いくつ上? 僕25歳。」
「女性にそんなことは聞くもんじゃありません。私もそのカクテル、飲んでみたいな。甘いの?」
話をそらして英治のグラスを奪い取るようにした。
英治はシュウと一緒の社会人バスケ部のメンバーだった。埼玉の地元で従兄弟が経営しているゲームセンターを手伝っている。
「ゴーコンの時、ゲーセンで働いてるって言ってたけどそれって正社員?バイト?」
美樹は気になったので尋ねてみた。
「そ。フリーターってやつですが、従兄弟に役員にしてくれって頼んでるとこ」
美樹は「ないっしょ」と心の中で思った。
目の前でグリーン色のカクテルを飲んでいる少年のような男と付き合えば、美樹は幸せになるのだろうかと考える。雨上がりの街を一緒に歩くだけならいいのか。結婚はせずにデートだけする相手?
頭の中でコンピューターがカチャカチャ動き出した。
混じり合うカクテル
東田との贅沢すぎる付き合い。身を委ねる事ができるセックス。英治はそれを忘れさせてくれるのか。
結婚したらまじな会社で働いてくれるのか。もしかして本当に従兄弟の会社で役員になれるのか。美樹の頭の中で様々な処理がされる。
Enterkeyを押す。
「やっぱりないっしょ…」
結論を出したとき、英治が美樹の肩を指でトントンと叩いた。
「なに」
「俺の事、頼りないビンボー男と思ってるだろ?」
意地悪そうに問いかける。居酒屋ではシャープな目つきに見えていたのに、今の英治はどんぐりを持つリスみたいにかわいい。
「んなことないよ。」
「女は男のどこを見るか、シュウ達とよくしゃべってるんだ。バスケ仲間はみんな背が高くていけてるからゴーコンではもてるけど、フリーター連中は見向きもされないか、数回遊んで終わりになるって」
美樹は自分の中のコンピュータの音を聞かれたのかと思った。
「だからさ、2、3回遊んでみなよ。俺、BGボーイだからさ」
「BGボーイ?」
「バスケもゲームもダントツうまいんだ。自信ある」
「セックスは?」
英治がキリっとした顔つきで美樹を見つめる。
「ダントツ」
英治がこぶしを握る。
美樹はジンライムを英治のグリーンのグラスに注ぎ入れた。
「おいおい、味変わるだろ」
「混じり合おうよ。うちら」
普通の恋の醍醐味
美樹と英治は翌日からLINEを何本送り合ったことだろう。いくつのいくつも湧き起こる話題がある。どうせなら電話で話せばいいものをお互いのLINEの切り返しが楽しくて夢中になった。
英治は新しいゲームマシンの話、美樹は宝石の魅力についてスマホの中の小さな世界で語り合った。馬鹿みたいなやりとりに忘れていた高騰感が蘇る。東田とのメールはこんなにバスケットボールみたいにはずまない。
「イケブクロウに7時半に来いよ」
「ダサ! 池袋にある銅像? ダサイって埼玉県民をばかにしてる言葉かな? 笑」
「今に見てろ、自分んちの練馬だって埼玉近いじゃないか」
若い男とのデートの約束。美樹はスマホを置いて、ドレッサーの前に座った。鏡に顔をくっつけてじっくり見つめた。
「あいつのほうが、肌きれいだわあ…」
イケブクロウは待ち合わせの人だかり。ハチコーは屋外なので空が混雑を緩和してくれる。こちらは屋内なので待ち人達が会うべき相手を探しながら窮屈そうにひしめき合っている。
美樹がキョロキョロしていると、腰の辺りをツンツンとつつかれた。振り向くと、英治が立っている。あきらかにイケブクロウの周りでは一番背が高くてかっこいい。
「新鮮…」
美樹は思わずつぶやく。東田との7年間、落ち着いた店の個室やホテルの部屋で人目を避けるように待つばかりだった。誰に見られても咎められない、雑踏の中で堂々と男に会うこと事態が新鮮なのだ。
張りのある肌。白髪のない元気にはえそろっている直毛の髪の毛。そして眼の中に、みなぎる力。
「なんだよ。新鮮って」
美樹はフクロウの銅像を見てフフっと笑う。LINEのやりとりをライブで流すような会話とつっこみ。はしゃぎ合う。8歳年下の少年のような男。
夕食後のパンケーキを食べたあと二人は公園で缶ジュースを飲みながら星を探した。
「見えないね。星」
「ど真ん中だからさ、都会の」
「サンシャインやパルコがない田舎に遊びに行かない?」
「いいね。川の流れる音がする山の中」
「行こう!」
二人はスマホを取り出して、最終電車の時間までネットで旅をした。渓谷や温泉地の写真をさんざんスライドしながら美樹は「こんな普通の恋もいいね」と聞こえないようつぶやいた。
⇒【NEXT】美樹はソレをかわいいと思った。違う。すべてが東田と違うのだ。思わず、股間に顔を寄せてすっぽりそれを口にくわえこむ。(【後編】恋愛とセックスのかけ算/24歳 美代の場合)
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あらすじ
主人公・美樹は、チェーン展開の宝飾店で働いている。
ある日、一回りほど年上の東田が奥さんと宝石を買いに来たが、奥さんは挑発的な態度で宝石店にクレームを入れまくり退出した…