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恋愛とセックスのかけ算/32歳 リカの場合
ジャケットは脱いで
「私と結婚する気ないの? もう6年も付き合ってるんだよ。今度32歳になるんだから」
リカは大きな声で叫びながら俊也にクッションを投げつけた。
バリ風模様のクッションが俊也(としや)の足下に転がった。
広告関係の仕事をしているリカは、入社以来、CMの仕事に携わりたくて猛勉強をしてきた。
新人の頃から日々任される仕事も同僚の倍はがんばってこなした。残業も早朝出勤も嫌がらずに率先して名乗り出るほどだ。
過去、「モーレツ社員」という言葉があったそうだがまさにリカは現代のモーレツ社員。
部署の先輩からは一目置かれ、後輩からは慕われていた。俗にいうゴミ仕事のような事も自ら引き受けた。
俊也と会ったのは6年前。食品関係の広告の仕事をしたときの打ち上げパーティーがきっかけだ。
「見る人の心をがっちし掴む、いいポスターですよね。」
リカのチームが手がけたポスターを指差して、俊也が話しかけた。仕事が一段落し、安心して少し酔っていたリカは
「消費者さんの気持ちはがっちし掴むの得意なんですけど、素敵な男性の心は掴めなくってー」
と自虐的な会話を振った。
俊也はその時、にこっと笑っただけだったが、その後、メールを会社のアドレスに送って来た。
「AB食品の松木です。新しい商品の小冊子をつくりたいのですが一度ブレストしていただけませんか。」
打ち上げパーティーで俊也の事が気になっていた。
リカは喜んで引き受けた。
まず最初はコンセプトだけ説明するということからリカ一人で先方に足を運んだ。
だだっぴろい会議室に俊也とリカと二人。無言で見つめ合って、緊張した空間だった。
「ははは、ここ広すぎますね。外に出ましょう。駅前に公園があって、ベンチがたくさん置いてあるんで」
俊也がジャケットを脱いで笑った瞬間、リカは「やれらた」と思った。
恋に落ちるってこういうことだ、と実感した。
公園のベンチで商品コンセプトを語ったのは15分だけ、あとは打ち上げパーティーでお互い気になっていたこと、ラジオCMを担当して言葉だけで商品の良さを伝えたいという夢を語ったりした。
そして、その日から、リカの携帯のVIP欄に松木俊也を配属して、王子様マークをあしらった。
2年前の誕生日

俊也のマンションとリカの部屋を行ったり来たりする関係が始まった。
あいかわらずリカは職場ではがむしゃらに仕事に打ち込み、俊也と二人きりの時は、食べて飲んでセックスして眠るという「人の三大欲求」を満たすような関係。
俊也も30歳を超え、現場マネージャーの役職を与えられてからは休日がなかなか合わない。忙しい都会の恋人像の典型だった。
2年前、リカの誕生日の夜だった。
俊也は自分で男の手料理を作ってお祝いするとはりきった。プルコギのたれを前日からつくって肉を仕込み、「肉食リカちゃんのためのバースデーメニュー」というカードを作り、ワインとマッコリを用意した。
その日、リカは家電新商品説明会が長引いていたので、こそっと抜け出して電話を入れた。
「俊くん、ごめん、ちょいおそくなるかも」
「そうかあ、すごいうまいプルコギなんだけどなあ。リカ好みで甘いんだ。みりんと水飴でタレを…」
「ありがと、ごめん、会社出るとき電話するわ。会場に戻る。」
リカは急いで電話を切った。
そして俊也の部屋に着いたのは22時半。俊也はマッコリを1本飲み干してソファで居眠りをしていた。
寝ている俊也の顔を覗き込んで唇に軽くキスをした。マッコリの甘ったるい香りがツンとした。
俊也はいきなりリカの腕をグイと引き、ソファに倒した。
リカの白いシャツの胸元を引きちぎる。ボタンが飛び跳ねてラグの上にコロッと転がった。
「やめて、俊くん、何するの」
俊也は無言で、ブラジャーを首元へ押し上げる。形のいい乳房を両手で押し上げててっぺんの突起を思い切り噛んだ。
「痛いっ。峻くん、ごめん、あやまるから許して」
「許さない。俺が昨日から用意してた誕生日、お前は会社のほうが大事なんだから」
俊也の手がリカのストッキングを破った。
欲しかったのはそれじゃなくて
その夜、リカは今までになく身体をのたうちまわらせた。今まで知らなかった感触。
自分の中心にある1本の細い柱を誰かの手でぎゅっと握りつぶされているような感覚。
「やめて、つぶれちゃう、離して」
と叫びたくなる。ぎゅうっと握りつぶされて、パっと解き放された瞬間、すべての血液が回り始める。手足の末端に、顔に。
そして頬が紅潮する。喉の奥からフゥと息が漏れる。
俊也にもいつもと違うリカの反応がわかった。ソファの背もたれにリカの片足を掛けてさらに開かせる。
白いシャツはくしゃくしゃになり、髪の毛は汗で額に張り付いている。
俊也にとってもはじめての快感だった。仕事を優先した彼女をおしおきする。
今日は責めてもいいんだ、リカが自分の好意を邪険にしたからだ、と言い訳をしながら 身体を押し付ける。何度も何度も。
リカは俊也が怒りながら発する言葉にもときめいた。
リカの上に覆いかぶさり俊也は意地悪そうに言った。
「もう誕生日なんか祝ってやらないぞ。会社と心中しろよ」
「許して…」
「今日は俺の言う通りにしろよ」
「わかった」
「ちょっと休むか?」
俊也がつながった身体を離そうとするとリカが小さな声を絞り出した。
「…やめないで」
ソファの上でリカは何度も震えた。握りしめられてはゆるむ感覚がたまらなかった。
そして、ぐったりしたリカに俊也は冷蔵庫から冷たい水を運んで来た。
「なんか、すげえバースデーになったな。風呂はいれよ」
「うん、でも、俊くんがつくったプルコギ、どうしよう。」
「弁当にして明日食ってくれよ。美味いんだぜ。」
「一晩タレに漬け込んでくれたのよね。甘いタレ。」
水を一気に飲み干し、マッコリの瓶に手を伸ばした。
「もう遅いから、酒はやめて寝ようぜ。あ、忘れてたよ。ハッピーバースデー。サーティーリカちゃん。今から30歳だ」
プレゼントの包みを手渡した。リカが好きそうなラメのポーチが入っていた。
シルバーの色がキラキラしてかわいらしい。
嬉しかった。自分の好みを知っていてくれる俊也。
でも30歳のバースデーなのに指輪ではないんだと、一瞬思った。
「リカ、今夜のお前、すごかったよ。びびった」
「やめてよ、恥ずかしい。でも、たしかに。知らない世界に目覚めた感じ。私たち、身体の相性いいんだね」
唇を俊也の頬に当てると、またマッコリの香りがただよった。
夢を叶えたくて
そしてあの夜から2回目の誕生日がやってきた。
二人のセックスの相性は抜群。街に繰り出すようなデートはほとんどないけれど、どちらかの部屋に篭って愛し合うには最適な関係だった。
リカは今年32歳。職場の同僚は未婚女性が多い。
リカは35歳までには子供が欲しい。一人暮らしは気楽だが、無性に人恋しい夜がある。リカは寂しさを仕事でまぎらわしている事に気づいていた。
子供ができたらもっと時間的に楽な会社に替えてもいいとさえ考えている。
旦那さんと、かわいい子供と三人で動物園や遊園地に行く風景が週末になると頭に浮かぶ。その旦那さんは、俊也なのか?もどかしかった
32歳のバースデーがせまったある日、リカは俊也が遊びに来たときに問いつめた。
「ねえ、峻くん、ちょっと至急扱いで回答して欲しい事があるんだ。」
「なに?急いでるって? もしかして」
「そう、2年くらい前から急いでるけど俊くん、気づいてくんないから。もうすぐバースデーだしね」
「ごめん、わかってるんだけど逃げてるかも、俺。リカのことは好きだ、体の相性もいいし、でも結婚となるともう少し考えたいんだ。俺が将来に自信を持ってから」
なんとなくはぐらかされたような言葉。わかっていた。
リカはわかっていたけれどはっきり確かめたかった。
「私と結婚する気ないの?もう6年も付き合ってるんだよ」
リカは大きな声で叫びながら俊也にクッションを投げつけた。俊也は困ったような顔でリカを見つめた。
「俊くん、今年いっぱいで区切ろう。男とちがってね、女はいろいろ旬があるのよ。ずるずる引き延ばして後悔したくない。今年の年末まで結論が出ないなら私、婚活するから」
リカははっきり告げた。俊也は何も言わずに頷いた。
その夜、リカはネットで街コンや婚活パーティーのサイトを探しながら思った。
「こんなパーティーで見つかるのかな。俊くんみたいに気持ちもカラダも相性がいい相手が。なんで俊くんは煮え切らないんだろ。自分だって三十過ぎたんだから結婚してもいいじゃない」
リカは婚活をしても俊也以上の相手が現れる希望が持てなかった。
6年間付き合っても結婚を言い出さない男、これ以上リカの女性としての時間を費やすべきどうか。
今度のバースデーに指輪をくれなかったら俊也を忘れた方がいいと、必死で思い込もうとした。
俊也のSNSプロフィールの画像はリカが撮ったものだ。青空をバックにニカっと笑っていて嫌みがない。画面に向って
「バーカ…」
とつぶやいた。
ラメのポーチから口紅とアイラインを取り出し、ポーチをゴミ箱に投げ捨てた。
やるせない想いがおそってきたが、リカは唇をきゅっと結び、婚活パーティーの申し込みページをクリックした。
END
あらすじ
リカには恋人がいて、夢もあった。
仕事関係で出会った俊也と付き合って6年。
35歳までに子供を産みたいリカだったが、俊也はいつになっても指輪をくれる気配がなくて…