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恋愛とセックスのかけ算/21歳 マリナの場合
理由
新作の美容液が7本、マリナのデスクに届いた。成分や効能をテキストファイルに打ち込みながらマリナはフっとため息をついた。化粧品のサンプルを集めて、使い心地をモニタリングするセクションで働いているマリナは高額な化粧品でも試すことができる。
実際、マリナの肌は美しい。頬は淡い桃色で光が当たるとツヤツヤと輝く。腕は白過ぎず健康的な赤みをおび、触るともっちりと弾力がある。
同じ部署の女性達から「小笹さんの肌、まじきれい。コスメサイトのモデルすればいいのに」とうらやましがられるほどだ。痩せすぎでもない、ほどよいプロポーション。バストだけはぐっと存在感があり、職場でも電車内でも視線を感じることが多い。
マリナは1人でカフェにいると必ず声をかけられる。もちろんいけてる男性ばかりではない。サイズの合わないシャツをパンツにインしたあり得ないスタイルの秋葉系、異様に汚れたスニーカーを履いている不潔な学生、サムライヘアが似合うと思っている自意識過剰系。
中にはごくまともなサラリーマン、さわやかなイケメンもいる。ひと言で言うとマリナはモテる。自分でも高校の頃から気づいていた。友達がことごとく恋に惨敗してもマリナは生き残る。恋の敗北感を感じたことが1度もない。
声をかけてくる男性には興味がなく、自分主導型恋愛。自分が選んだ男性に気持ちを伝えると100%うまくゆく。付き合うことができる。女友達はそんなマリナを嫉妬しそうなものだが、それはまったくない。
なぜなら、マリナの恋は、必ず3ヵ月半でジ・エンドするから。
「マリナ、やっぱ3ヵ月と2週間で終わっちゃったよねー。世の中うまくいかないねー」というあわれみ形で終焉を迎えるからだ。もてすぎる女、マリナの恋が続かない理由、それはセックスにあった。
ココアが似合う男
2年前の春、マリナには気になる男性がいた。マリナは毎週末にミニシアターで映画を観るのが好きだ。テーマが難解な無名映画を一緒に観てくれる友達はいないので、1人で通っていた。
スペインとイタリア合作のドラキュラ映画を観た夜のこと。画面いっぱいに飛び散る血しぶきが残像で頭に残り、気分が悪くなった。しばらくロビーのパイプ椅子に座って休んでいた。寒気がしてブルブル震えるマリナに心配そうに声をかえてくれた男性が清登(きよと)だった。
「だいじょぶ?ドラキュラ怖かった?貧血?誰かと一緒じゃないの?ひとり?寒いの?」
質問系の言葉を次々に重ねながら、薄手のニットの上着を肩にかけてくれた。震えているのがわかったのだろう。
「ここの前にカフェあるから、ココアでも飲む?寒気するんでしょ?」
マリナはやっと質問に答えることができた。
「ありがとう。寒気する。熱いココア飲みたいです。」
清登は抱きかかえるように店にマリナを連れて行った。
ココアを2つ注文して、ポツンポツンと話をした。
「俺、ひねくれもんだから、みんなが観るハリウッド映画とかで盛り上がれないわけ。誰も観たことがないような映画を探し出して、映画通のふりするのが好きでさ」
清登は、ひねくれ者のわりにはやさしい笑顔をしていた。珈琲よりココアが似合う、ぬいぐるみのような丸い瞳がかわいい。
「私は、人の気持ちを淡々と追うような静かな作品が好きで。派手なシーンがなくても、ジワっとハートが温められるような。でも今夜のは例外。あんなキモいドラキュラだとは思わなかった」
2人は2杯目のココアを注文して閉店まで映画の話をした。ゆっくり時間が流れ、マリナの寒気も震えもいつのまにか止まっていた。
やわらぐ不安
マリナと清登は、週末一緒に過ごすようになった。ミニシアターに行く時もあれば、中高年が好むような古民家園や、旧岩崎庭園、堀切菖蒲園などしぶい公園を散歩することもある。
メジャーなデートスポットより落ち着いた場所。好みが一致するとこんなにも居心地がいいのかとマリナは浮かれた。これまで好きになった人はやはり外見で判断していた。
ちょっと悪そうなイケメンが好み。清登は外見で好きになったのではない。好む物が似ていた。初めてココアを飲んだ時からずっと、一緒にいると気持ちが落ち着いた。心が波風を立てない。むしろ仕事や人間関係で波風が立っていても清登と話すとすっとなごむ。
マリナにとって清登は最高のカレシに思えた。今度こそ3ヵ月で別れたりしない。エッチだってきっとうまくゆく、清登ならやさしいから、とマリナは怖さをごまかしながらその時を待っていた。
清登は叔父さんの家で居候しているのでデートはもっぱらマリナの狭いアパートだ。付き合い始めて3ヵ月経った頃。リバーフェニックスが生きていた頃の映画「スタンドバイミー」の録画を寝っころがって観ていた。
有名な曲のフレーズが流れたとき、清登の手がマリナの頬を撫でた。
「マリナはほんと、肌がきれいだ。スベスベだよ」
「仕事で、高級化粧品試してるからだよ」
「頬もうなじも手も、キスしたい」
マリナは眼を閉じた。映画は何度か観たものだ。ラストシーンはわかっている。清登は静かに頬に、うなじにキスをした。そしてふくよかに盛り上がった胸を撫でながら明かりを消した。
マリナは今まで付き合ったカレシは3人。どの彼ともこうなった。そしてどの彼ともここまでだった。清登とは最後の一線を越えたかった。だが怖くて身体がこわばった。
清登がショーツの中に手を入れた。じんわり芯が熱くなるのを感じた。不安がやわらいだ。きっとだいじょうぶ。清登とは最後までできる。ひとつになれる。心の中でそう唱えて、マリナは閉じていた脚を開いた。
消えた恋

清登が耳元でつぶやいている。
「マリナ、これからもずっと一緒に映画観よう。俺ら合ってるよな」
何かを確認するように。その声のトーンが荒々しくなる。息があがっている。清登の指に力がこもる。
指が中心の感じる部分をまさぐった時、マリナは充分湿っていた。安心した。
「今度こそだいじょうぶ。清登を受け入れることができる」
マリナは清登の股間を探った。まるで別の生き物のように熱を帯び、硬直している。
その時だ、その固形物が清登の身体に寄生しているエイリアンかもしれないという想いがよぎった。瞬間、昔の恐怖が蘇った。怖い。エイリアンが自分の体内に侵入しようとしている。
これは清登の身体の1部ではない。嫌だ。離して。離れて。あっちへ行って。混乱する。清登はマリナの入り口に硬直したものを押し付けた。ヌルリとした気味が悪い感覚。先端が粘液でヌルヌルする。
「嫌だ、怖い」
マリナは首を横に振る。清登がもう止まらないというような声で途切れ途切れに言う。
「だいじよぶ。ゆっくりするから」
グっと押し込まれそうになる。
「痛い!痛い、痛いよう」
マリナは腰を引き、両手で清登の肩を上に突き上げた。
清登の上体がマリナから離れた。
「いてえ、こっちが痛いよ。なんだよ、いきなり」
清登が今まで見せたことがない顔を見せて怒り始めた。電気スタンドをつけると肩に爪が当たったか擦り傷ができて血がにじんでいる。
マリナはしゃくりあげた。
「ごめん、ごめん」
「したくないなら最初から言えよ。途中で突き飛ばすなんてアンフェアだろ。ひでえよ」
マリナの泣き声が大きくなった。
また繰り返しだ。カレシとひとつになろうとしても、痛くて入らない。痛さと怖さがからまりあって気持ちがシャットする。そして身体は逃げてしまう。セックスに慣れた男性と付き合っても結局挿入できず、マリナはバージンのまま。
指を2本入れて練習するところから始めてくれた彼もいたが、結局結合にはいたらなかった。清登のことは受け入れたかった。きっとできると思った。3ヵ月も一緒にいて心から安心できると思えたのに。
涙を流すマリナにチラリと眼をやって清登は冷たく言い放った。
「男の前で泣く女は苦手なんだ。しかも俺が泣かせたみたいだろ。やめてくれよ。マリナがその気になったからしようとしたんだ」
清登は明らかに怒りをかかえている。
「うん、清登くんは悪くない。私が悪いんだ」
清登は服を整えると、靴を履いた。
「気分悪いから帰る。しばらくLINEは入れないでくれ」
1人で部屋に残され、マリナは途方に暮れた。
セックスができない私、カレシができてもすぐにいなくなってしまう。どうしたらセックスができるようになるの。どうしたら痛くなくなるの。私も人並みの恋がしたい。結婚したい。またしても3ヵ月と2週間で消えそうな恋。
マリナはセックスのことで悩む女性達が集まるサイトを探して、自分と同じ悩みを持つ女性はいないか調べようと思った。涙で濡れた頬をタオルでぬぐい、自分の身体に向き合う覚悟をした。
END
あらすじ
主人公・マリナは1人でカフェにいると必ず声をかけられる。
しかしマリナは自分主導型恋愛をしたいので、それらの誘いには興味がない。
その理由には嫌な過去があって…