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官能小説 繋がりたいの。
繋がりたいの。
★作品について
この作品は、小説サイト「ムーンライトノベルズ」と合同で開催した、「女性の為のHなラブコスメ小説コンテスト」のLC賞作品です。ドキドキの小説をお楽しみください。
三十三歳。夢が叶った。
そのひとときをどうしてもどうしても味わいたくて、けれどもこの年齢まで叶わないとなると一生叶わないかもしれないと諦めかけて。
「い・・・・・・っ」
わたしは唇を噛んだ。リップを塗っておいたのに、唇はかさついていて、ささくれ立っている。歯が唇に食い込む。それでももはや唇の痛みは感じない。全身のすべての痛覚が、体の真ん中の痛みに意識を集中させていた。
「麻子、だいじょうぶ?」
英司が止まって、わたしを覗き込んだ。暗がりに浮かび上がる英司の表情には憂いの色が滲んでいた。そんな英司の優しさが申し訳なくて、けれども下の方、繋がっている性器は動いてなくても痛くて、涙が滲んできた。
「痛かった?もうやめようか?」
言いながら英司はわたしの頭を撫でてくれる。だからわたしの胸は張り裂けそうになって言ってしまった。
「ううん、続けて。気持ちよすぎて、嬉しくて、涙が出てきたの」
耐えなきゃ。英司をがっかりさせちゃいけない。
夢が叶えば、手放しで幸せを味わえるのだと思っていた。実際、英司と愛を確かめ合うことはとても幸せだと思う。
体が真ん中から裂けてしまうような激しい痛みを除けば。
***
三十三歳にもなると、処女という言葉はコンプレックスを通り越し、体の自由をきつく縛りつける枷だった。わたしは男性恐怖症ではない。男性と寄り添って生きることを蔑むタイプの人間でもない。男性とお付き合いしたいと常に思っているし、その先に結婚があればいいなとも思っている。さらにわたしは・・・そういう欲も人より強い方だ。
愛する人と幸せなセックスがしたい。
性の知識を蓄える年頃になると、それがわたしの夢として膨らんでいった。
柔らかな寝息が優しく耳をくすぐった。英司の広い背中がこちらを向き、寝息に合わせてふくらんだり小さくなったりしている。
体も心も大きいひと。
わたしはなめらかな背中に見とれつつはだけた布団を肩までかぶせた。体を動かした拍子、敏感な部分に再び痛みが走った。
結局英司は最後まで挿入することなく、わたしの中から出て行った。もっとうまく演技ができていたら、英司だけでも最後まで楽しめたかもしれないのに。わたしの中から出てきた英司自身は張り裂けそうなくらい大きくて、硬くて、罪悪感が募った。
わたしはせめてお詫びにと、手と口で英司自身を愛撫した。英司が口の中で達した瞬間はほんの少しだけ救われたけれど、すぐに思考は再び暗い靄に支配されてしまう。射精しても英司のものはまだ硬く、わたしを責めるかのように目の前に屹立していた。
「麻子ありがとう。すごく気持ち良かったよ」
英司はやさしい。だから、余計に笑顔を作れなかった。
大好きな人と抱き合うのは、ただただ気持ちいいことなのだと、思い込んでいた。
鼻をすすって、わたしも額まで布団をかぶった。英司の背中を向き、押し寄せてくる感情を溢れさせないよう必死だった。
わたし、セックスすらまともにできないんだ。
ほとばしる悲しさから目を逸らすため、そして自分の体が憎らしかったから、わたしは乱暴に自分の裸の胸を鷲掴みにした。英司の手や唇で愛された記憶はすぐそこにあり、あっという間に脳を犯した。痛いくらい強く掴んだのに、先端が固くなった。
「・・・ヘンタイ・・・」
わたしはか細く呟いた。まだ痛みが残る部分が、涙を流して潤んでいるのだ。英司自身と触れ合ったという事実と記憶が、女の部分を問答無用で潤す。
英司の体温がすぐそこにあるのに、わたしは途方もなく独りぼっちだった。
エッチの悩み
昔から何をやっても人並み以下で、不器用なタイプだと自覚はしていた。自分は何もできない人間だ、と落ち込むことも少なくない。ただ、本当に好きな人の愛をきちんと受け止めることすらできないという事実には相当堪えた。お前に人を愛する資格なんてない。そんな風に突きつけられたような思いだった。
あれから何度か体を重ねているが、慣れるということはない。何度抱かれても、わたしの体は痛みに悲鳴を上げる。わたしに英司を愛する資格はないのだろうか。
考えがそこに至ると無意識のうちにため息がこぼれた。
「やだ、麻子ったら。久しぶりに会ったのにため息なんかつかないでよ」
向かいで喋り通しだったエリーが口を尖らせた。ついでに店員を呼んで二個目のケーキを頼んだ。空になった皿を持って店員が去るとエリーはわたしに向き直った。
「それでね、こないだの誕生日にカレがラブグッズをくれたのよ」
「・・・ラブ、グッズ?」
「麻子は使ったことない?大人のオモチャよ」
そこまで聞いてサッと頬が熱くなった。さすがのエリーも顔がいくらか上気していた。
「カレったら、『そのバイブ、早速使って見せて』って言うのよ。あたしもオナニーなんて男の前でしたことなかったけど、すっごい幸せだったから全部見せたわ」
あけすけにエッチな話をしているのに、エリーは全然いやらしくなかった。むしろ綺麗で、満たされていて、本当に幸せそうで。内側から優しい光を放っているみたいだった。先月付き合い始めたという彼氏と、うまくいっているのだなあと思った。それだけに、わたしの中の影は一層濃度を増す。
「麻子、また暗くなってる。あんまりエッチな話って好きじゃなかったっけ?」
「そうじゃないけど・・・」
帰国子女でアメリカの血が半分流れているエリーは、十代の頃から性の話も堂々と口にする。思ったことは何でも口に出す。けれど人の気持ちも敏感に感じ取ることができ、思いやりのある子だ。
「あのね、そのエッチのことで悩んでいるの。わたし・・・」と、悩みを打ち明けた。
高校二年で出会った時、既にエリーは好きな男の子とのセックスを楽しんでいた。初体験は日本に来る前の十四才のことだったという。エリーと比べたらわたしの性の経験は赤ん坊レベルで、恥ずかしかったけれど、こんなことを相談できるのはエリーだけだった。
「それはつらいわね・・・慣れれば大丈夫・・・と、言いたいところだけど、あまり痛すぎると慣れる前にエッチが嫌になっちゃうわね」
その言葉を聞いて鼻の奥がツーンと痛くなった。英司と愛し合うことが嫌になってしまったら・・・想像しただけで泣きそうになった。
「そうね、麻子は経験が少なすぎるから、まず自分で慣らしていくのがいいかも」
「自分で・・・慣らす・・・?」
店員がエリーのケーキを持ってきたので、一端口を閉じた。店員がいなくなるとエリーは二個目のケーキを頬張りつつ話を続ける。
「まあ、一人エッチよね。気持ち良い場所を自分で探して、感じやすいカラダを作るとか。そうすると濡れやすくもなるし。麻子って普段オナニーしてる?」
いや、その、とわたしは口ごもった。
「エリーみたいに、その、大人のオモチャは使ったことないけど・・・手で、ちょっといじったりとか・・・たまにやるよ・・・」
「それこそ、ラブグッズを使うのもいいと思うよ。ピンクローターとか、軽めのものもあるから麻子でも使いやすいと思う」
大人のオモチャ、という言葉がわたしの頭の中で渦巻いていた。確かに男性器そのものの形をしたものをネットでチラッと見たことがあるし、挿入の練習には良いのかもしれない。ただ・・・。
「麻子って多分オナニーとかラブグッズを使うことに罪悪感を覚えちゃうタイプよね。でも、別に女性だって一人で楽しんでもいいのよ。好きな人とのセックスのためになるし、美容にもいいんだから」
それでも、わたしは冷めてしまった紅茶をじっと見つめた。するとエリーの手が伸びてきて、そっとわたしの頭をひと撫でした。
「でも、麻子のそういうところ、素敵で好きよ。きっと麻子の彼氏も麻子のことが大好きだから、あまり悩まないでね」
何でもはっきりと口にする親友を持つと、少し気恥ずかしくて、とても幸せだ。わたしは一粒だけ涙をこぼして、「ありがとう」と呟いた。
ラブグッズで…
何度同じミスをするの?
いつまで学生気分でいるのよ!
いい加減にして!
すべてわたしが昼間、部下に向けて発した言葉だった。
自分の靴音の間を縫い、自らの厳しすぎる叱責が耳に蘇る。このパンプスはヒールの音が尖っていて好きじゃない。
完全に八つ当たりだった。英司とのことでずっとモヤモヤしていて、いつまでもウジウジしている自分にも腹が立って、きつい言葉を投げつけてしまう。
西の空にはまだうっすらと夕陽の名残が漂っていたが、金曜日の街はすでに浮かれ始めている。わたしは一心不乱に自分のアパートを目指した。本当は英司に夕食を誘われたけれど、断った。こんな自分、絶対に綺麗じゃない。こんな自分を見せたくない。だから、会わない。
アパートに着き、鍵をかけて五分もしないうちに宅配便が来た。差出人は、エリーだった。私の誕生日はまだ先なのに、何だろう。まだ帰宅したばかりで手洗いうがいしかしていないのに、わたしはエリーから送られてきた箱が気になって、着替えもせずに開封した。
綺麗な色と模様のショッパーに包まれていたそれらは、この間エリーがしきりに勧めてきたものだった。
「やだ・・・エリーったら」
吐息と共に漏れた呟きは、どこか湿りを帯びていた。生まれて初めて見た、実物のラブグッズだった。
『初心者向けのセットを選んだから、それで彼の喜ぶカラダを作るのよ!』
同封されていた手紙を読んでまた目頭がじんわり熱くなってくる。エリーのその気持ちがわたしの涙腺を弛ませる。
送られてきたものは、ピンクや空色のきれいな色をしたラブグッズが三つに、ローションに・・・
わたしはラブグッズをそれぞれ箱から取り出し、こわごわと触ってみた。正直、わたしが想像していたラブグッズとは違ったイメージだ。例えば、いやらしい色をしていたり、形や質感が生々しかったり。女性が家に置いておくのをためらうようなデザインのものばかりだと思っていた。けれどもエリーが送ってくれたラブグッズは、すべてかわいいパステルカラーで、形も抽象的というか、どこか愛らしいとすら思えるような形をしていた。わたしは一人暮らしをしているけれど、万が一誰かに見られても誤魔化せそうなデザインだ。感触もぷにぷにしていて柔らかく、デリケートな部分に当てても痛くなさそう。
(デリケートな部分に・・・)
体の芯の温度が少しずつ上がっている。わたしはカーテンを隙間なく閉め、玄関の鍵も確認し、すべてのラブグッズに付属の電池をセットした。
(どうせ、着替えるんだし・・・)
手は、次々と自らの服を剥ぎ取っていた。もどかしくてわたしは、産まれたままの姿になった。
お腹がすいていた。体が言うことをきかないだけで、本当はこういうことが好きなのだ。本当は、女性として満たされたいのだ。
もらったラブグッズの中で一番とっつきやすかったピンクローターを手にし、電源を入れた。楕円形のたまごのような先端部分が震える。それをいきなりデリケートな部分に当てるのは怖かったので、バストトップにそっと這わせてみた。
「・・・っ!」
体の奥に電気みたいなものが流れると、瞬時に全身の皮膚をやわらかな熱のベールが覆った。吐き出された息が熱かった。
「だめ・・・」
唇からこぼれた言葉は無意識で、手はピンクローターで乳房をなぞっていた。
「・・・あっ・・・んっ」
なぜか、裸の英司が脳裏に映し出された。厚い胸、たくましい腕、そして、わたしの奥を一心不乱に求め続ける、熱くて硬いその部分。
「・・・ぁあっ、え、えいじ・・・」
そこから、蜜が滲み出てくるのを感じた。妄想だというのに、わたしの体はヴァーチャルな英司を求めている。両胸の先端も、脚と脚の間にある小さなつぼみも、膨らんで硬さを増していた。
わたしに触れるこの手が英司のものだったら・・・
ピンクローターで上半身をいじめると、その手は自然と下へ降りていった。震える楕円形がゆっくりと茂みをかき分け、敏感な部分へ近づく。わたしの本能も震え、その刺激を切望した。
ピンクローターが膨らんだつぼみに触れた。
「ぁ、ああんっ!そこは、・・・!」
体が痺れたような感覚に襲われ、勝手にビクビク動く。快楽の波に呑み込まれて、溺れそうだ。
もうだめ。おかしくなりそう。頭ではそう思っているのに、手はピンクローターをつぼみに強く押し当てる。
それは突然だった。狂おしいほどの光が近づいてくる感覚。それからすぐに頭が真っ白になり、甲高い声をあげて、わたしは達した。
甘い余韻を楽しむ、というよりは呆然としていた。いつの間にか乱れていた息を整える。
我に返ると全身びしょびしょだった。肌は汗に濡れ、あの場所は快感に酔って蜜を滴らせていた。
蜜の滴っている部分に触れてみると、びっくりするくらい濡れそぼっていた。本人には絶対言えないけれど英司とのセックスではここまで濡れたことはない。
ふとわたしは蜜の湧き出る泉に、おそるおそる指を入れてみた。ぬめっていたので、中指一本ならすんなり入った。
わたしはもらった中で最も大きなバイブを手にした。大きな、といっても英司のより少し小さいくらいで、きれいな空色がバイブとは思えない。けれどもスイッチを入れるときちんと振動して、ちゃちなオモチャとは違う。
バイブのスイッチはオフにして、少しずつ中に挿入した。果てたばかりのそこはまだ蕩けていて柔らかく、先端が少しだけ入った。異物感はあるけれど痛みはない。ただ、そこからさらにバイブを入れると少し痛くて、手を止めた。
(落ち着いて・・・リラックスして・・・)
自らに言い聞かせると目を閉じ、また頭の中の英司の記憶を取り出す。切なげな表情でわたしの中に入ってくる英司。わたしの中に硬くて熱い、英司のが・・・。そう思いつつ、再びゆっくりと奥にバイブを進める。痛かったけれど英司のより小さく、ぷにぷにと軟らかかったためかすべて中に入った。
(なんか・・・変な感じ・・・)
英司のものじゃないのに、興奮が肌の下を這い回る。本当は挿入だけでやめておこうと思っていたが、興味には勝てずスイッチを入れた。興奮は、スイッチを入れるとさらに存在感を主張した。下半身にさっきより濃厚な熱が溜まってくる。
(ナカが・・・ナカが・・・)
バイブをゆっくりと前後に動かす。前に使ったピンクローターでたくさん濡れたせいもあるのかもしれないが、動かしてもそれほど痛くなかった。目を閉じて、英司に抱かれている自分を想像する。
快感
「えいじっ・・・!」
内側から熱が溢れてきて手が止まらない。快感が声になってこぼれる。
「えいじ、すき、えいじ・・・!もっと・・・!もっとしてっ・・・!」
やがてまた光が駆け上がってくる感覚に襲われ、快感がわたしを抱きすくめた瞬間、ビクンと体が跳ねた。快楽の矢に貫かれたと思った時にはもう果てていた。
気持ち良かった。わたしはちょうど良い温度のお湯にぷかぷか漂っているような感覚をしばらく味わった。
全身を弛緩させながら、頭では一人エッチの最中のことを考えていた。心や本能が、その瞬間に向かって手を伸ばす感覚。最大の熱を享受しようと、心も体も開いていく感覚。自分の手でしている時には味わったことのない感覚だった。
(こんなに・・・気持ち良いものだったなんて)
ぼんやりとした頭で考えつつ、蜜に濡れた部分をティッシュで拭った。
微かな希望が見えた気がした。こんなわたしでも、好きな人に抱かれる悦びを感じられるかもしれない。英司を悦ばせることができるかもしれない。
わたしは、女として無能ではないのかもしれない。
わたしの中でさんざん濡れたバイブを握りしめ、裸のまましばらく放心した。
その次の金曜日も、次の次の金曜日も、わたしは英司の誘いを断った。休みも、一緒にランチはしたがホテルに誘われると体調がすぐれないと言って断ってしまった。
ほしいだけの自信が、まだ手の中にない。いつでも英司を受けいれられるという自信が。英司には申し訳ないけれど、それが手に入るまでセックスはしたくなかった。結局、生理や互いの予定が合わず会えない時もあって、一緒にベッドに入らない期間は二ヶ月近く続いた。
わたしはエリーからもらったグッズを積極的に活用した。バイブを何度も挿入しているうちに、痛みや異物感が気にならなくなり、そこにものを挿れることへの抵抗感が薄れた。抵抗感が薄れると、挿入する時の体の硬さがなくなり、また挿入へのハードルが下がる。そんな好循環が生まれた。
ただ、別の思いも芽生えた。ラブグッズでの一人エッチは、英司を受け入れるためにやっていることだ。しかしせっかく英司が求めてくれているのに応えず一人でしているわたしは、罰当たりな悪い女なのではないか。わたしは英司の性器ではなくバイブで楽しんでいるのだ。英司のためとはいえ本当にこれでいいのか。そんな思いが膨らんでいき、不安が濃度を増していった。
わたしはひどい女だ。そう思いつつも手はバイブへと伸び、自らの敏感な部分を刺激してしまう。四方を壁に囲まれた小さなアパートに圧し殺しきれない喘ぎが散って落ちる。罪悪感と裏腹に、そこをいじる手やバイブの動きは激しさを増し、より強い快楽を求める。バイブを出し入れする濡れた音が鼓膜を震わせると、どんどん英司の体が欲しくなる。無機質なバイブでは物足りなくなる。
ああ、わたしは英司を愛している。
こんなことで分かってしまうなんて、わたしは馬鹿な女だと思う。けれどもわたしは心だけでなく、英司の体も愛しているんだ、そう気づくことができたのは大きな収穫だった。
積極的な女性
冷蔵庫の中を見て、最低限の食材が残っていることに安堵した。
「簡単なものしか作れないけど、ちょっと待ってて」
「いきなり来てごめんな。急に麻子のごはんが食べたくなって」
残業してアパートに戻ると、ドアの前で英司がしゃがみ込んでいた。そんな彼の第一声は、「腹へったから、ごはん作って」だった。久しぶりに彼を家に上げることと、その意味を考える暇もなかった。わたしはジャケットだけ脱いでエプロンを着けた。
パスタソースを作り置きしておいて助かった。鍋の水を火にかけ、野菜を洗って。キッチンでせっせと動いていたら突然動きを封じられた。英司が後ろから抱きついてきたのだ。
「俺、すっごく飢えてる」
英司が耳元で囁く。その抱き締められている感触や、耳にかかる吐息の熱さが鼓動を加速させる。わたしは必死で平静を装う。
「急いで作るから・・・」
「お腹だけじゃなく、あっちの方も・・・」
そう言った英司の手がわたしの胸に伸びてきた。
「麻子のおっぱい、ずっと触りたかった。おっぱいだけじゃなく、お腹もお尻も・・・あそこも。麻子の体が欲しくて仕方なかった」
複雑な思いが滲んだ。英司がわたしを求めてくれているのは嬉しいけれど、わたしはそんな英司を待たせてしまったのだ。
「ごめん、英司。本当にごめんね・・・」
胸の内には複雑な思いがさざめいていたが、体は違った。わたしは体をよじって英司と唇を重ねた。互いの舌を絡めたのはほとんど条件反射だった。英司の舌の柔らかさと味は、安らぎと興奮という相反する感覚を同時に呼び覚ました。
触れたのは、わたしからだった。ずっとずっと欲しかった英司のその部分にそっと手を這わせたのだ。そこは温かく、硬さを増していた。絡み合う二人の唾液の間を、英司の熱い吐息がすり抜けていく。英司が唇を離すと潤んだ目でわたしを見つめた。
「麻子・・・っ・・・積極的だね・・・」
そんな英司が愛おしくて、どんどん大きくなるそこを撫で続けた。
「ぁ・・・駄目、それ以上は我慢できなくなる・・・」
「・・・スイッチを入れたのは、英司よ」
自分の言動とは思えなかったが、わたしは沸かしていたお湯の火を一旦止めて、英司のベルトに手をかけた。
「ごめん、わたしも我慢できないから・・・ごはんは後にして」
あっという間に下着まで下ろすと、硬く立ち上がった英司自身を口に含んだ。口の中に広がる英司の匂いにわたしの下半身がきゅんと疼く。
「英司の、おいしい・・・」
口の中で唾液と先走りがとろとろに混じり合い、英司はさらに大きくなる。
「ごめ・・・ちょっと・・・ストップ・・・」
女の子みたいな喘ぎ混じりの声に、わたしは「えっ?」と英司から口を離した。その隙を英司は見逃さなかった。わたしはその場に押し倒された。
「言ったでしょ?麻子に触りたいって」
英司は言いながら乱暴にわたしの服を剥ぎ取る。ショーツ一枚の姿になったわたしは、小動物の赤ん坊のように全身を舐められる。
英司の手はわたしの胸へと伸び、優しく撫でたり、かと思うと強く揉んだり。乳首は英司の指と舌が交互に転がす。
英司の舌や手が触れたところは、やわらかな熱がポッと花開くかのように火照りを増す。その度に、わたしの体のすべてが性器になり、彼を求める。あの、バイブで初めて知った感覚のもっと強いものが、わたしをかき乱す。
不思議だった。あれほど不安だった挿入が、それほど怖くない。
「麻子のここ、もうトロトロだよ」
「やだ、あまり見ないで・・・」
英司がわたしのショーツを下ろすと、ショーツは濡れて糸を引いていた。
「今日の麻子、すごくエッチでかわいいよ」
英司は私の言葉なんて聞かず、蜜でずぶ濡れになったそこに視線を注いだ。
二人が繋がる時へと、確実に近づいている。なのに、わたしの体と心は英司に向かって開かれている。これもバイブで「練習」してきたおかげなのだろうか。
英司の指が、わたしの泉に分け入ってきた。わたしの中から蜜をかき出すような動きで内側をこする。多分、以前なら指一本の動きでも痛かったはずなのに、今はどんどん上りつめてしまう。加えて英司は舌で膨らんだつぼみを弄ぶ。二つの刺激でわたしの意識はどこかへ飛んでいきそうだった。
「あっ・・・英司だめ・・・おかしくなっちゃうぅっ・・・!」
「すごい、麻子、たくさん溢れてくるよ・・・!」
「お願い、もう入ってきて・・・!英司が欲しいのっ!」
すると英司は私の泉に自身をあてがった。もう性器が触れ合っただけでも気持ち良い。
英司はゆっくりと入ってきた。張りつめた先端の感触が、奥を目指してじわじわと進んでいる。以前の痛みの記憶が、まったく過らなかったといえば嘘になる。それでも「麻子、痛くない?大丈夫?」と頻りに訊いて慎重に挿入してくる英司の優しさに、心まで蕩けてしまう。以前は挿入が苦痛で、ほんの少しの時間がものすごく長く感じたのに、もう痛みは感じない。英司自身の感触を楽しむことすらできた。
英司を、全身で欲した。
感触を愛しく思えた。
麻子と英司
「麻子、全部入ったけど大丈夫・・・?」
「わたし・・・英司のを・・・」
その部分を見やると、確かにそこが密着していた。英司は不安が滲んだ視線をわたしに投げかける。
「我慢してない?痛かったら、今日はもう・・・」
「・・・分かるの」
「えっ?」
英司の眉根に刻まれていた不安が一瞬だけほぐれた。
「英司の形が、分かるの。そのくらい余裕があるの。英司が・・・たくさん濡らしてくれたから」
そう言っているうちに涙がこぼれてきた。
「英司が優しくてすごくうれしい。ねえ、動いてほしいな」
「麻子・・・大好きだよ」
そう言うと英司は再び私の唇にキスを落とした。繋がりながらのキスは心の底から幸せだと思えた。
唇を離すと、英司はまだためらいの残るリズムで腰を前後し始めた。そのリズムで反射的に喘ぎが漏れた。いやらしい水音と喘ぎが部屋に響く。
「んっ・・・!英司っ・・・きもちいぃよぉ・・・!」
「麻子、すごくエッチな声・・・かわいい・・・」
「お、く、突かれるの、好きぃ・・・もっとしてぇ・・・」
ためらいがちだった英司のリズムは、やがて速さを増してわたしの奥を強く突いてくる。快感が明滅しながらクレッシェンドしていき、全身の細胞という細胞が甘く痺れている。なにより、英司のもので満たされていく感覚がたまらなく愛おしかった。
バイブも気持ち良いけれど、それとは比べ物にならない。
「どうしよう、麻子のナカ、すげー良い・・・もうイキそう・・・」
英司の動きがより激しくなった。わたしは最早泣いて喘いでいた。泣いてしまうほど気持ち良いなんて、初めてだ。どんどん押し寄せてくる快楽に体の動きを奪われ、英司と二人、深いところへと溺れていく。英司とならどこまでもいける。
「英司・・・わたしも・・・大好き」
直後だった。全身を一直線に快楽が貫き、わたしは言葉にならない言葉を、無意識のうちに叫んでいた。ガクガクと体が震えて、英司にしがみついた。その瞬間は、手を取り合うように、英司と一緒だった。
繋がったまま、英司は脱力した体を覆い被せるようにわたしを抱き締めた。耳許に、英司の乱れた息が聞こえる。汗ばんだ逞しい胸がくっついている。
わたしは、やっと英司のすべてを受け入れたんだ。
そう思うと込み上げてくるものがあったが、涙はもう乾き始め、熱い喜びが胸の中に満ちていた。
「俺、麻子に嫌われてしまったかと思ってた」
何気ない呟きのような言葉だったが、急に背中のあたりにフローリングの冷たさを思い出した。英司がわたしの中から出て、体を起こした。
「違う、わたし・・・」
「麻子、お尻まですっごい濡れてる」
「えっ」
唐突に話が違う方を向いたので混乱したが、確かにそこは床までぬめるくらい濡れそぼっていた。わたしは恥ずかしくて何も言えなかった。
「セックス、いつも痛そうだったし嫌なんだろうな・・・最近、なんか避けられてるような気がしてたし、俺のこと嫌いになってしまったのかな・・・そんな風に思ってた。だから今日、麻子に拒まれたらどうしようって、怖かった。でも」
と、英司はわたしの体も起こして、ついばむような軽いキスをした。
「麻子が全身で俺を愛してくれたのが分かって安心した。最高に気持ち良かった。俺、麻子を好きになってよかったよ」
「わたしも、英司が大好き」
それから、飽きもせず互いに何度も体を愛撫した。何回も何回もひとつになり、大好きな人と全身で愛を確かめる喜びを味わった。
わたしは愛する人をきちんと愛せる。頑張って自分を磨いたから。
もう、大丈夫。
何回抱き合ったか分からないくらいした後だった。英司のお腹から切なげな音が聞こえてきた。
「そういえば麻子、腹減ったよ!麻子もお腹すいたでしょ?」
ついさっきまで激しく腰を振り男の部分を見せていた英司と、子どものように空腹を訴える目の前の男性が同一人物だなんて。胸の奥がくすぐったくて、思わず笑みがこぼれた。
今まで英司を受け入れることができなくて、わたし自身も体の中が空っぽに凪いでいた。のどが渇いている感覚や、お腹がすいている感覚に似ていた。けれど、やっとわたしの中は英司で満たされた。
本当は英司を受け入れたい、なんて建前でわたしが英司と気持ち良くなりたかったのだ。わたしのなかを英司で、お腹いっぱいにしてほしかったのだ。
「わたし、お腹いっぱいだよ。英司のおかげで」
きょとんとする英司を尻目に、わたしは服を着て、エプロンを着けた。
END
あらすじ
この作品は、小説サイト「ムーンライトノベルズ」と合同で開催した「女性の為のHなラブコスメ小説コンテスト」の大賞作品です。
33歳になる麻子はつい最近まで処女だったが、愛する男性ができた。
そんな麻子にはある悩みがあった。大好きな英司と、セックスの時の痛みで最後まで出来ないのだ。
性欲も人一倍あって、英司を心から愛しているのに…。
最後までセックスできないことに罪悪感を感じていた麻子は…。
著作者:峻夏