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官能小説 おやすみのキスをして
おやすみのキスをして
「ごちそうさま」
ふたりで、声をそろえて手を合わせた。
恋人の亮と私は、この部屋に同棲してもうすぐ1年。
リビングでゆっくりテレビを観ながら食事をするのが、私たちの小さな贅沢。
でも今日は、なんだか彼の様子がおかしい。
何を訊いても、返事が一瞬遅れる。
お気に入りのバラエティ番組を観ていても、目が半分しか笑っていない。
どうしたんだろう?
「ちょっと、トイレ」
彼が、ソファから腰を上げた。
彼が部屋を出ていった隙に、急いでリップグロスを塗り直す。
それから、彼のお気に入りのアロマキャンドルに火をつけて。
トイレのドアが閉まる音がした。
ソファに戻って、慌てて髪を整える。
「えっ、どうしたの?」
戻ってきた彼が、ちょっと乾いた声で驚いている。
「ねえ、なんか疲れてない?マッサージでもどうですか」
私はそう言って、自分の膝の間の前に座って、と促した。
嬉しそうに、すんなりと床に座り込む彼。こういう素直なところも愛おしいのだ。
「はあ〜……気持ちい……」
彼の声が、ようやく少し、柔らかくなっていく。
「いかがですか、お客様?」
「最高です」
そうでしょう、と誇らしげに返せば、それを聞いた彼がふふ、と笑う。
優しい声も、柔らかい髪も、広い肩も、丸い耳も、全部が愛おしく感じる。
そして。
しばらくマッサージをした後、私は彼の耳を軽く指で支えて、唇で触れた。そのまま、何度も何度も、優しくキスをする。
「……ん……はぁ、」
嗚咽が混じったような彼の吐息を聞いて、今度は舌で耳をなぞってみる。
耳の外側のラインを確かめるように。
内側のくぼみを洗い流すように。
耳の奥に、舌先が届くように……。
「はっ……はぁ……」
吸う息も吐く息も激しくなって、胸と肩が大きく動き始める。
それを確かめて私は、わざとらしい音を立てながら耳をくわえこんだ。
キャンドルだけの明かりでオレンジ色に浮かび上がる部屋の景色に、ちゅる、ちゅる、とこだまする淫靡な音。
「私はね、亮くんがいてくれるだけでいい。生きててくれるだけで、それが一番の幸せだよ」
耳から口を数ミリだけ離して、半分は吐息で、半分は声で、ささやいた。
少しくたりとして、脱力しているらしい彼がはあ、と深く息を吐いた。
「……も〜!好きすぎる!」
そう、ひとりごとみたいに呟いて、次の瞬間。
突然立ち上がった彼は、私をガッと抱き上げてベッドに連れて行った。
それから、泣きそうな、嬉しそうな、ちょっと悔しそうな、はしゃぐような。
グチャグチャにかき混ざった表情をして、私を抱いた。
激しくて、少し乱暴で、でも雑じゃない。
いつもより硬い中心を奥の奥まで届かせながら、彼は「愛してる」と何度も言った。「本当に」と、何度も何度も言った。
私はただ、全身の細胞を支配していく甘くとろけそうなしびれの中で、しっかりと彼の目を見て頷くことしかできなかった。
ふたりで一緒に果てた後、彼はそのまま眠ってしまった。
何があったかわからないけれど。
そういう日があってもいい。弱いところも、辛いことも、全部、私に吐き出してほしい。
私は亮のすべてを受け止めたい。愛したい。そう思う。
隣で眠っている彼の唇に、目に、頬に、そしてもう一度耳に。そっとキスをした。
その瞬間、彼の表情がふっ、と軽くなった気がした。

これからもずっと、こうしてキスをするんだろう。
すべての電源をオフにする、大事な大事な“おやすみのキス”を。
END
あらすじ
同棲してもうすぐ1年の亮と私。
ふたりで過ごす小さな幸せの時間。
だけど彼の様子がいつもと違って…?