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官能小説 【後編】たった二日で、上司が婚約者になってしまった。
やきもち
「おい、体調が悪いのか?」
「うおっ!?」
化粧室を出た途端腕を掴まれ色気のない声が出た。掴まれた腕を振り払うまではしない。副社長だ。
「少し顔色が悪いか?熱は……ないな。寒いか?それとも熱い?」
壁に寄りかかる様に立たされて額に手を当て熱を測られた。突然出てきてなんなんだ。
「ちょっと疲れ……いえ、体調が悪いので帰らせていただいてもよろしいですか?」
「疲れたのか。もう義理は果たしたし帰るか」
言い直したのに無視されてしまった。
「帰るって……副社長はまだいていいですよ」
「裕樹と呼べ」
「北北西商事の専務のお嬢さんとお話しましたか?」
「したした。まだ二十二歳のお嬢さんだった。お前ふらついてるぞ?大丈夫か?」
少しくらくらしていた。元々今日は休日モードだったのだ。それなのに人混みに連れて来られて、精神的な準備が足りてなかった。疲れてしまっていた。私は壁に寄りかかり、副社長を見上げる。
「大丈夫です。水谷さんとも話しましたか?さっき副社長と」
「名前で呼べ。裕樹と」
「裕樹さんとよりを戻すって言っ……なんで笑ってるんですか?」
「お前、やきもち焼いてんのか?」
「……は?」
やきもち?
…………
いや、やきもちではないかな。
「チッ……そんな顔すんなよ。試しに言ってみただけだ」
「すみませんこんな顔で。あの、申し訳ないのですが私、具合が悪いので帰らせていただきます」
副社長を押しのけようと背中を壁から離すと、肩を押されて壁に戻された。
「副……裕樹さん?」
そのまま覆いかぶさるように、とん、と壁に手を付かれる。片手だけだ。右側の、会場の方向のスペースが塞がれる。
これは……いわゆる壁ドンだ。
じっと、見下ろされていた。何も言わない。目が合っても逸らすことなく、じっと、私を見ていた。いつもと違う視線に、私は動けなくなっていた。息が詰まる。
私を大切にしてくれる人
「ゆーきぃー?」
遠くで水谷絵美里が副社長を呼ぶ声が聞こえた。金縛りが解けるかのように、息が出来るようになる。
「……呼ばれてますよ、多分」
「あんな厚化粧の女よりお前の顔を見ていたい」
「私も今日は結構厚塗りされてますけど」
「そうか?まあ、確かに」
そこで、副社長は身をかがめて。私に、ちゅっ、と音を立ててキスをした。
「確かに、美味うまそうな唇をしている」
副社長の唇に口紅が付いた。それを、目の前で、本人が私を見ながらぺろりと舐めた。
「…………なんで」
続きを言う前に再び唇が重ねられる。唇を食はみ、離れ、また重ねられ、また離れる。左腕を上下に優しく撫でられながらキスが繰り返される。
私は……なぜキスされているんだろう……?
「目を、閉じろ」
唇が触れたまま、熱のこもった声で命令される。この男は人に命令し慣れている。そして私は、この男に命令され慣れていた。
「……ん……ふっ」
命令通りに目を閉じると舌が入ってくる。舌と舌を擦り合わせ、弄ぶように口内をかき回される。自然と舌が彼の舌を追ってしまう。
キスが深くなる。ぴちゃ、ぴちゃ、と二人しかいない廊下に音が響く。上司で命令し慣れていて、俺様な男。それなのにキスはとても優しく、私をうっとりさせるには十分だった。
唇が離れて目を開ける。顔が近い。
「お前、理想が高いと言ったな。どんなだ?」
息が、かかるほど近い。
「おい、言え」
「……経済的に、安定してて」
「俺はしてるぞ」
「借金が無くて」
「俺はないぞ」
「腹筋が割れてて」
「俺は割れてる」
「……私を大切にしてくれる人」
「大切にする。俺でいいだろ?」
壁と腰との間に手を入れられ、きゅっと抱きしめられた。キスの余韻でふわふわしていた。そんなふわふわした状態で手を引かれて廊下を進む。
なんでキスされたんだっけ。メイクが……ええと、口紅がどうとか。ふわふわとそんなことを考えている間に、いつのまにか車に乗せられていた。
車はスムーズに走り出した。副社長は無言で運転している。ええと、そうだ、帰るんだっけ。
しっかりしなきゃ。思春期の子供じゃあるまいし、キスで意識を飛ばしてしてどうする。いやでも、かなり気持ちよかったし……
思い出すと心拍数が上がってしまう。なんだっけ。私の好みのタイプがどうとか話したっけ。そう、大切に……
私はちらりと副社長を見る。大切にするって、言ってた。
副社長は私の事を……?
そして私はそれを嬉しいと思ってしまった。嬉しいと思うということはそういうこと・・・・・・なのだ。
私の中の何かが、カチリ、と音を立てて空いた気がした。ドキドキと胸が脈打ち、勝手に心拍数が上がる。体が熱くなり、息苦しくなる。胸が痛い。
なんだ、これは。
諦めたはずの恋。
それなのに。
「おい」
声を掛けられて我に返る。
「大丈夫か?」
車は止まり、副社長が助手席のドアを外から開けて私を見ていた。
脱がされるドレス
いつのまにか駐車場に着いている。見覚えがある。副社長のマンションの駐車場だ。副社長はニヤニヤ笑いながら私を見ていた。
「な、なに笑ってるんですか!」
「顔、真っ赤」
副社長はそう言って私の頬に触れた。一気に顔に熱が集まる感じがした。副社長は嬉しそうに笑うと、私の手を強く引いて車から降ろし、そのまま引っ張ってエレベーターに乗った。
腰を引き寄せられて体が密着する。見上げると目が合う。
無言で見つめ合っているとポン、と音が鳴って副社長の部屋のある階に着く。半ば抱え込まれるようにして連れて行かれ、玄関に押し込まれる。ドアが閉まると同時に後頭部を掴まれて、また深くキスされた。
さっきより激しい。口内すべて舐め回すように深く口の中を蹂躙される。
「んんっ……」
息が、出来ない。
でも、気持ちいい。
「……ふっ……んんぅ」
舌が絡み合い、唾液が流れ込む。飲み切れない唾液が口からこぼれていた。片手で後頭部を押さえられているので逃げられない。もう片方の手は私の背中を、お尻を撫で続けていた。
「ふぅんんっ」
きゅっと舌を吸われて快感が突き抜ける。キスだけで、こんなに気持ちよくなるなんて……
そっと唇が離れると、お互いの唇を結ぶように糸を引いていた。思わず手で口を覆うと、さっと横抱きにされ部屋の奥へと運ばれる。
「あ、の、副社……」
「裕樹」
「裕樹さん、私、その、心の準」
言い終わる前にベッドに下ろされた。天井と副社長が目に入る。ちゅ、と音を立てて頬にキスをされた後、くるりと流れる様にうつぶせにされる。
「あの、裕樹さ」
背中のボタンが外されていく。
「ま、待って下さい、私、ひゃっ」
うなじにキスされた。背中のボタンを外し、それを追うようにどんどんキスされていく。腰のボタンを外され、スリップの上から強く吸われる。
「……っ」
感じてしまい、きゅんと体が疼く。くるりと再び仰向けにされ、するりとドレスを剥ぎ取られた。
「このドレスを着たのを見てから、ずっと脱がしたいと思っていた」
「え」
「デザインで気付くだろ。どう考えても男が脱がすためのドレスだ」
にやり、と笑うと驚いている私のスリップの肩紐を外し、下にずらした。ブラが丸見えになる。思わず両手で隠そうとするけど、その手を払われてフロントホックが外される。
「綺麗な色だ」
なんてことを言うんだ!私の胸に副社長は顔を近付けた。
「や、あぁっ!」
先端を口に含まれる。ぴちゃぴちゃ音を立てて口の中で転がされた。
「あっ……あぁん」
ぞくぞくと快感が背筋を抜ける。
「ゃあっ……裕樹さっ……あぁん」
両手で両胸を掬うように揉みながら、先端を舌で転がされる。
気持ちいい……
口に含まれた胸の反対の胸は、先端を親指と人差し指で摘まみ、くりくりと弄られる。
「やぁ……ぁっ」
「硬くなってきた……気持ちいいか?」
「あぁん……まって……」
「甘いにおいがする……白い肌に乳首だけピンク色。たまらないな」
「そん、な……あぁ、ゃあ、なめちゃやぁっ」
「可愛い声だ」
まだ明るい部屋の中で胸を弄られて、私は感じてしまっていた。止めて欲しくて、離れて欲しくて副社長の頭を手で押すけれど、何の抵抗にもなっていないようでずっと胸を舐め続けている。
「やぁああっ!」
胸を強く吸われると同時に反対側も抓られて、私は甘い声を上げてイってしまった。
理想通りの男性
はぁはぁと呼吸をしていると、胸の下で体に巻き付いているスリップを下げられる。腰を撫でられて自然と浮かせてしまった。するりと足からスリップが抜けて、完全に脱がされる。
ブラも外されベッドの外へ放り投げられた。上半身に身につけているのはダイアのネックレスのみ。
脱がした本人を見上げていると、スーツの上着、ベスト、タイとどんどん脱ぎ、たくましい体が露わになった。筋肉質な素肌にどきりと胸が鳴る。やばい……好きだ。
私、副社長……裕樹さんのことが好きだ。
「裕樹さ、ん……私」
「俺の事、嫌いじゃないだろ?それくらい分かってるぞ」
再び覆いかぶさり、私の頬にキスをする。
「それは、私……あっ」
首筋をツーっと舐められて快感が走る。
「お前の理想通りの男がここにいる」
鎖骨のくぼみを舐め、さらに下に下がる。
「俺にすればいい。問題ないだろ?」
「やぁあっ!」
きゅっと鎖骨の下を強く吸われ、びくんと体が撥ねた。
見下ろすと、吸われた跡が付いている。
自分の胸元にいる裕樹さんと目が合う。うっとりとした顔で見られ、目が離せない。ゆっくりと顔が近付き、唇に触れるだけのキスをされる。
「環」
名前を呼ばれて息を飲んだ。なんだ、その声。今まで聞いたことがない、低く何かが滲む声。
どくどくと心臓がうるさい。
「いいだろ?」
熱のこもった目で見つめられ、私はじわりと濡れてしまっていた。足が震える。息が上がり、声が出ない。裕樹さんは優しく笑うと、今度は深くキスをする。
「ふぅ……ん……」
鼻から息が抜ける。私は気持ちがいいキスを受け入れていた。するりと、ショーツに潜り込む手も。
初めはキスをされながら、ショーツの中でナカをかき回されるだけだった。それでも、裕樹さんの指がナカに入っていると思うとゾクゾクした。
好きな人の指が、私のナカをかき混ぜている……自分の声とは思えない声が勝手に出た。別に初めてじゃないけど、こんなに感じているのは初めてかもしれない。
戸惑っていると、快感が突き抜けるところを押され、体が反った。すると、裕樹さんはそこをしつこく攻め始めた。
「……ぁあっ……はぁ…ああぁっ」
「ここか……」
唇と唇を触れ合わせながら、ナカを攻められる。
「やあぁっ……っやっ……やめ」
快感から逃げられず、体がびくんびくんと勝手に揺れる。
「ここだな……イイんだろ?」
「ああぁんぅ……やぁっ……はぁあんっ」
「イイんだな……一本増やすぞ」
「はぁ…んんぅ……っ」
「締まった……気持ちいいんだろ?」
気持ちがいい。とても、とても。
「ぁ……っ」
裕樹さんが指を抜き体を起こした。びしょびしょのショーツをゆっくりと脱がされる。そのまま両足を開かされ、膝を立たされた。
丸見えだ。足を閉じようとするとその間に裕樹さんが入り、また指を入れられる。
「あぁっ……ゆび、も……やぁ」
さっきより多い。三本入ってる……!
「可愛いな……環、ナカも…トロトロだ。どんどん溢れてくる…シーツが濡れてくぞ」
「やぁ……みないでっ」
「……なあ、そろそろ挿れていいな?」
訊きながらも感じる所で指をバラバラに動かされる。
「あぁっ……やあぁっ……」
「ははっ目が潤んでて可愛いな……一回イっとくか?」
「あっ……!」
三本の指でいいところを押されながら、芽に触れられた。
「あぁっ……それ、やっ……ああん」
「嫌じゃないだろ?俺の指を……締め付けてくる」
裕樹さんはそう言って顔を私の蜜口に近付けて。
「あっ……やああぁあ!」
じゅっと音を立てて芽を吸った。びくびくと体が痙攣してイってしまった。
イってる間もじゅるっと音を立てて蜜口を吸われる。気持ちが良すぎて、頭の中が真っ白になった。
「環、挿れるぞ……」
指が抜かれてもっと太いものが蜜口に触れる。見ると、前を寛げた裕樹さんが硬くなったものを押し付けていた。
「大丈夫だ……優しくする」
ここまで来て嫌だ、とは言わない。私はこくりと唾を飲み込む。恥ずかしさの中頷くと、すぐに先端がめり込んだ。
「あぁ……っ」
「痛くないだろ…?くっ……狭いな……っ」
「ぅうん……っ」
指とは圧倒的に違う重量感のあるものがゆっくりと、でも迷いなくどんどんナカを埋めていく。視界が潤んだ。痛みはない。快感と、埋まっていく、満たされて行く感じ……うっとりと私は目を閉じた。
「はぁぁ……おっきぃ……っ」
「おま……煽んな……ぅっ」
「んんっ……っ」
じわりと体がしびれた。
「全部、入ったぞ……」
そう言われて目を開ける。私の体の両脇に手を付いて、見下ろされていた。息を荒げながらもうっとりとした表情で私を見ている。その表情にじんとした。
好きだ……この人が、好きだ。
「これは……好過よすぎる……な……」
裕樹さんは熱のこもった声で吐息交じりにそう言った。気持ちよさそうだ。嬉しくて胸がきゅんとする。
「っ…オイ…まだ締めるな……っ」
すごく色っぽい顔をしてる。まるで深呼吸のように長く息を吐いてから、顔を近付けてくる。
「環……」
顔にかかる息が、熱い。またキスをされる。舌が私の舌を絡めとり、私もそれに応える。
気持ちいい。きゅうっとナカが締まったのが分かった。裕樹さんがまた呻いた。
腰が勝手に動いて
「くっ……動く、ぞ」
私は頷くことしかできなかった。
「あぁ……っ……あんんっ……裕樹さ……っ」
「はぁ……環……すげぇ、気持ちいい……」
ゆっくりとした抽挿だ。それでも信じられないくらい気持ちが良かった。覆いかぶさった状態での抽挿は、肌と肌が擦れ合い、その摩擦も熱さも快感に変わっていた。
「熱くて……トロトロ……くっ……絡みついてくる……っ」
「あぁ……やぁ……言わない……でぇ」
「声も可愛い……ああ……環……もっと声出せ……っ」
「ああんっ……や……まって……」
ゆっくりだった抽挿がだんだんと早くなる。体を揺さぶられて、鎖骨の上でダイアが弾むように揺れる。何も考えられない。気持ちが良くて、溶けそうだった。
「ひろ…さ…んんっ」
ぱちゅんぱちゅんと恥ずかしい音がする。
「はぁ…はぁ…気持ちいい…環、お前は…っ気持ちいいか?」
「あぁ……裕樹さ…ん……あぁん…やぁ…そこはぁ」
ナカの気持ちいい所を何度も何度も裕樹さんのものでガツガツ攻められる。
「ここだろ……?ふっ…さっき…っ…感じてた……くっ」
気持ち良くて気持ち良くて私は裕樹さんにしがみついた。
裕樹さんの動きに合わせて腰が勝手に動いてしまう。
「ゃぁっ…あぁん…あっ…」
「はっ…締まった……っぅ…気持ち…良いんだな?」
「あぁん…裕樹さ…っ気持ち、いい…っすき…っ」
「……っ…くっそ!…お前…っ」
パンパンと肌がぶつかり合う音と、ぐちょぐちょといういやらしい水音が重なる。指で散々攻められた場所を、裕樹さんの熱くて、硬いもので擦られ続ける。入口から最奥まで、感じるところ全てを擦られる。どんどん追い詰められる。視界が霞む。
気持ちいい……とても。とても気持ちがいい……!
「やぁっ…まってぇっ…イっちゃ…うぅっ…あぁんっ」
「環…っ…環っ…」
ぐりっぐりっと最奥を抉るように激しく突き上げられる。
「はぁっ…ああぁんっ…やぁっ…イっちゃうぅ…っイっちゃうのっ」
「環…っ…いい…イけよ…っ……くっ…!」
「ああぁあぁああっ!」
「環っ……!」
体を反りながらびくんびくんとイってしまった。それを押さえるかのように強く抱きしめられながら、ナカに温かいものが広がっていく。
裕樹さんも私に感じてた……そう思うと痺れるような多幸感に包まれた。
「環……愛してる……」
裕樹さんの声もうっとりとしてる。私はそのまま、意識を手放した。
婚約指輪
ゆっくりと背中を撫でられている感触で目を覚ました。
「…………」
ベッドの上、抱きしめられた状態で横になっていた。
「大丈夫か?」
今まで見たことのない、とろけるような微笑みで問われる。
「……はい……」
裕樹さんと……と思うと恥ずかしかった。裕樹さんをみると私を見ている。目が合う。幸せだけどむずむずする。
抱きしめられている体温と、かけられたさらさらのシーツの感触が気持ちいい。返事をしたきり何も言わない私を、裕樹さんはただ見つめていた。
「……裕樹さん?」
「なんだ?」
すごい甘い声だ。どきっとしてしまった。
「なんだ?なに可愛い顔してるんだ」
「そ、そっちこそ。なんでそんな笑顔なんですか」
「惚れた女が自分の腕の中にいる幸せをかみしめてる」
「ほ……」
「お、真っ赤になった」
赤くなっている自覚はあった。今何時なんだろう。まだ外は明るい。昼過ぎに連れ出されて新年会は一時間もいなかったと思う。
時計を見ると…………ん!?七時!?
驚いて起き上がろうとしたら腰に痛みが走り、力なくベッドに沈む。
「おい、大丈夫か……?」
本気で心配されている。
「こ、腰が……」
それになんだかまだ挟まっているような気がする。シーツの中を見るとお互い全裸だが、当然、もう挿入はされていない。裕樹さんいつの間に全部脱いだんだ。気付かなかった。
動けない私と違い、裕樹さんは腹筋を使ってさっと起き上がると、私の頬にキスをした。
「朝食はここまで運んでやるよ。待ってろ」
「朝食……?」
「もう七時だ。お前はパン派?米派?」
「パ……え!?朝!?」
「……覚えてないのか?」
覚えてって、何を?
「ヤりすぎて記憶飛んだのか?いや、お前わりと最初からイキまくってたもんなぁ」
最初から……?むしろ一回目しか覚えてないんですけど……
「お、覚えて……ません」
「……」
あ、ちょっと不機嫌になった。不機嫌になられても困る。覚えてないのは覚えてないのだ。
「そんな顔すんな。俺もがっつきすぎたしな。悪かった」
優しい手つきで頬を撫でられる。温かい感触にほっとする。
「まあ、これからいくらでも、忘れられないくらいヤれるしな」
「!」
裕樹さんはにやりと笑うとベッドから降りて服を着始めた。
これから……いくらでも……
そうだった。彼は私が好きで、私も彼が好きだ。
また顔が熱くなる。胸も、温かくなる。これは喜びだ。裕樹さんの喜びをかみしめている、という言葉の意味がよく分かった。
それから本当に裕樹さんはベッドまで朝食を運んできた。ふたり並んでベッドに腰かけて食べる。
ハムとチーズが挟まったホットサンドとコーヒー。とても美味しかった。
「指輪、買いに行くぞ。婚約指輪」
左手を握りながらそんなことを言う。
「本気で、私と結婚するつもりですか?」
「もちろん。早く結婚しねぇと他の女を押し付けられる。籍だけでも入れとくか」
それはちょっと心の準備が出来てない。唸る私の左手の薬指を撫でながら、裕樹さんは幸せそうに笑う。
「お前が結婚してくれるならいつでもいい。指輪は、お前が毎日つけたくなるような、お前が一番気に入ったものを買うぞ」
たった二日で、上司が婚約者になってしまった。結婚はお互いの気持ちだけで出来るものではないけど。
今はまだ、幸せをかみしめていたいと思った。
END
あらすじ
二年前から副社長の専属秘書になっている宮緒環。休日に突然「緊急事態だ」と副社長からの電話を受け、取引先の新年会に急遽出席することになってしまった。
強引に連れて行かれドレスを着せられ、会場に着くと、自分の立場と恋心を思い出してしまう。