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官能小説 奥様は、寂しがりや。


作品について

この作品は、小説サイト「ムーンライトノベルズ」と合同で開催した、 「妄想小説コンテスト」の優秀賞作品です。

一週間の遠征

「は?」


命令書に書かれた行先に、クラウスは騎士団に入ってこの方初めて目を疑った。国境までの、護衛。そういえば隣国から使節団が来ていた。


そうか、国境まで。


「俺は王都の警備ですよね?」


「爽やかに聞いても無駄だぞ?ご高齢の長老だからな。万一に備えて実力者は全員、参加だ。まあ、一週間だ。我慢しろ。」


「俺に死ねと?」


新婚生活に降って湧いた遠征任務である。ここ数十年和平条約により安定しているこの国では、国内でのいざこざの鎮圧、蛮族刈り程度はあっても、他国までの遠征はほぼ無かった。大抵の場合、向こうも騎士団をつけてくるが、今回は王家の意向もあり、帯同するらしい。要するに、手厚く扱ったという政治的アピールである。


クラウスは、出立の前夜までしつこくアーシェを鳴かせ、戸締まりと火の始末をよくよく言いつけ、実家には顔を出してくれるよう手紙を書き、街の警備に当たる後輩に見回りを強化するようにと銀貨を握らせた。


「大丈夫ですから、気をつけていってらっしゃいませ!」


アーシェににこにこと微笑まれては行かないわけにもいかず、かくして一週間の遠征がはじまった。

喪失感

「もう、無理だな。」


「クラウス。まだ一日目の夜だ。」


早くも軽く酒を引っ掛けてる上司や同僚をしりめに、クラウスはげんなりとしていた。勿論、クラウスとてアーシェに毎晩強いているわけではない。クラウスも仕事柄、夜勤番がある。アーシェの月のものとてあった。


それでも、結婚してからほぼ常に隣に寝ていたのだからその喪失感は激しかった。仕事から帰ればアーシェがいるのと、仕事が終わってもアーシェがいないでは世界がまったく別である。飲めないわけではないが、元々それほど好まないので、酒に溺れることもできない。


「クラウス、ミハエル。今回はよろしくたのむ。」


「団長、お疲れ様です。」


「お疲れ様です…。」


「なんだ、随分暗いな。嫁さんのことなら、警備は問題ない。王都の夜は、昼より安全。なんて諺もあるんだ。騎士団で普段見回りしてるんだからわかるだろ?」


「団長は奥様と離れて辛くはないのですか!?」


「ちょ、クラウス。団長、すみません。」


ミハエルが止めるが、団長はそれを聞いてニヤニヤと笑って声を潜めた。


「帰ったときに、求めて来んのも最高にクるぜ。」


「なるほど。」


毎夜、身を焦がしたアーシェか。それは見てみたい。


「俺、上司もこっちだったかー。異動できねーかなー。」


「冗談だよ…ミハエル。まぁまぁ新婚なんだし、案外嫁さんも寂しがってるかもしんねーぞ?」


アーシェが、寂しがる、か。

はしたなく疼いて

いつもクラウスが満たして下さる場所が、はしたなく疼いてしまう。昨日、たっぷり愛してもらったのが尚の事身体を切なくしていた。


彼のやり方を思い出しても、所詮は自身の指でしかない。中途半端に昂ぶった胸はぷるぷると震えながら、クラウスに吸われることを今か今かと待っている。「アーシェの乳首は恥ずかしがりやだね。」と耳元で囁かれながら、長い人差し指を押し込まれては吸われ、ようやく顔を出すのである。そのときの刺激を思い出しながらぐりぐりと指でいじめても、鈍い快感は身体を這い回り、出口もなくアーシェをかえって身悶えさせた。


我慢が聞かなくなったアーシェは、ベッドいっぱいに両脚を広げ膝を曲げゆるゆると腰をくねらせる。

はぁ、はぁ、という吐息と共に濡れたショーツはベッドサイドに落とされる。


「クラウス様っ。」


彼がしていると思いながら、ゆっくりと肉芽を擦りあげる。ここも、いつも沢山してもらえて気持ちいいところ。ゆっくり、ゆっくり、快感がたまっていく。


腰が揺れ動いて、空想の中のクラウスを誘う。脚のつま先が勝手に動いて、シーツを掴む。目を閉じ、口で枕を噛んで、絶頂に備える。


くる。きちゃう。気持ちいいのが。


呼吸が激しくなり、枕から口が外れ、大きな声が寝室に響いてしまう。構わず指を擦りつづけると、生理的な涙があふれた。


「クラウス様っ!クラウス様っ!」


アーシェは愛しい騎士の名前を呼びながら達した。


いつも愛して貰える胸が、ずるい、ずるいと余計にうずいた。クラウスの逞しい物で埋るところが切なくなって、だらだらと蜜だけが流れていった。


「あんっ、いや!クラウス様ぁ。止まらないのぉ!」


すっかり日が昇るまで、アーシェはクラウスを思って手を動かし続けた。


アーシェの温度

「大丈夫かぁ、クラウス?」


「問題ない。」


「いや、なんなのその隈。まあ、もう帰れるから。長かったなー。なんもなくて良かったけど。」


王都に入ったので、あとは城で馬を休ませ、備品を片付ければ遠征組は数日の休日である。一週間、悩まされ続けた淫夢もこれでおしまいのはずである。自分を想って一人で耽るアーシェは、大変可愛らしかったが、やけに生々しかった。寝不足でイライラしながら自分で処理するのは、虚しさもひとしおだった。


「よかったな、やっとアーシェちゃんに会えるな。」


「アーシェ…。」


彼女に会える。おかえりなさいと言ってほしい。


今はただ、アーシェの温度を隣に感じて寝たかった。

ただいま

「おかえりなさいませ!」


「ただいま。」


「アーシェ、会いたかった!!!」


ぎゅ、っと抱きしめると安心する。軽いキスから移行しようとすると、アーシェに頬を包まれる。これはこれで可愛い。


「目の下。隈がありますわ。今夜はたっぷり寝てくださいね?」


「え。」


よくできた奥さんはお風呂は準備万端であり、それに浸かればとろとろと意識はとけていった。ベッドに入ってアーシェがそっ、と頭を撫でたと思ったら睡魔がおそい、意識が沈んだ。

離れたくないのは…

久々にゆっくり眠れたからか、元々睡眠時間は多くないのもあってか、夜中に喉が渇いて目がゆっくりと覚めた。隣にはアーシェがいるようだが、意識がはっきりしてくると自分の指先が何か水っぽいものに触っている感覚がする。


「アーシェ?」


「あ、ちが、あのっ、あっ、ああ?!」


ベッドに乗る裸の女性の画像

ベッドサイドのランプを片手で小さくつけてやると、真っ赤になったアーシェと目があった。彼女の小さな手はもう片方の自分の手に触れていた。布団の下で見えなかったが、何をしているのかは一目瞭然だった。


指先が触れていたそこに、ぐっと力を入れて中のいいとこを押してやる。


「俺の指が、濡れているんだけど。ねぇ、ここはなに?」


「ひあっ!動いちゃ、ああ!!ごめっ、ごめんなしゃっ。」


自分の指に翻弄されて、羞恥で顔を歪めながら必死にごめんなさいと繰り返す妻は、こちらの加虐心を煽った。眠気はもう、とっくに吹き飛んでいた。


「アーシェ、俺のいない間に一人でしてた?」


「して、ませ!」


「本当に?我慢できなくて、旦那さんの指できもちよくなってしまう奥さんなのに?なら、もう止めようかな。」


「したっ。しましたっ!でも、ビクビクたりなかったの!!クラウス様じゃないと、だめなの!」


夜着の中で、既に大きくなり始めたそれをアーシェを虐める右手はそのままに、左手で何度かしごく。


「何回したのかな?」


「やっ、んんん!敏感だから、らめ、そこぉ。あっ。」


体勢を変え、アーシェを下にする。わざとゆっくりネグリジェを脱がしながら、乳首もコリコリと虐めてやる。自身をアーシェにあてがい、息も絶え絶えなアーシェにそっとささやく。


「俺は君で毎日抜いてた。君は?」


「ホント?クラウス様、ホント?」


大きな瞳は吸い込まれそうなほど綺麗だった。大切で大切で、でもこの目から快楽の涙を自分にだけ見せる彼女が好きだった。そっ、とアーシェの腕が首に周り、彼女の小さな声が吐息のように耳をくすぐった。


「アーシェも、アーシェも、毎晩したの。ちゃんとイケてないのっ、ああ!!」


聞くか聞かないか。滾る物でアーシェを貫いた。具合の良いところにあたり、アーシェの声が高くなる。 自身が締め付けられ、のさらに奥へといざなわれる。


「アーシェ、この、奥が、すきだな!?」


「あっ!しゅき!クラウス様が、あっ!」


「一週間も、ここに無くて、どうだったんだ?!」


「会えないのも、抱いて、貰えないのも、悲しっ!寂しいの、やだ!クラウス様っ!やだぁ!まだいったらやだぁ!」


「くっそ!」


ぎゅうぎゅう暴力的に締め付けながら、まだと言う。寂しかった、と言う。


良かった。君に会いたかったのは、俺だけじゃない。離れたくないのは、俺だけじゃない。


「何度でもしてやる!アーシェ!」


「クラウス様っ。」


どくどく、と彼女の中に吐き出すとそのまま倒れるようにアーシェを抱きしめた。


「クラウス様、好き。」


「俺も。」


明日きっと、アーシェは真っ赤になって恥じ入るんだろう。そんな彼女を、一日甘やかすのもわるくない。


「おやすみ、アーシェ。」


クラウスがそっと額にキスをすると、アーシェは幸せそうに眠りについた。


END

あらすじ

遠征任務で一週間奥様と離れることになり、意気消沈する旦那様。
妄想の中で色々なことをされてしまう奥様だったが…

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