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官能小説 縛られたい


縛られたい

はあ、とため息を吐く。
最近の私はおかしい。

おかしくなった原因は、嫌というほどわかっている。
原因は今も、目の前のパソコン画面に映し出されていた。

成人向けの、いわゆる『エロゲ』である。

画面の中で男性に貫かれながら色っぽい声を上げているのは、小さくて、白くて、目がくりっとしていて……まさに'可愛らしい”を体現しているヒロインだ。
両手両足を縛られて、自由を奪われた状態で沢山の男性に体中を触られている。

私はその画面を見つめながら、ハーフパンツの中に手を伸ばす。
中はもうぐっしょりと湿っていた。

こんなもので興奮してしまうのは、ちょっぴり後ろめたい。
だって、私にはちゃんと彼氏がいるのだ。セックスだって満たされている……と、思っていた。

大学時代にサークルで知り合った彼・祐樹は、とても優しい。
眼鏡を掛けていて、性格は温厚。絵にかいたような優しい彼氏だ。

セックスはいたって穏やか。
画面の中のようなことは、してくれそうにない。

けれど、私はそんな祐樹が好きなのだ。
優しくて私を傷つけることなんて絶対に出来ない祐樹が。

「祐樹っ……!」

名前を呼びながら私は一気に昇り詰めてしまった。

……かなりの罪悪感。

大体、職場の同僚が面白いよ、などと言ってこんなエッチなゲームソフトを貸してくれたのが悪い。
まあ、好奇心からプレイした私も悪いけど。

---

『今日、泊まりに行ってもいい?』

昼休みに祐樹からのメールが入っていた。

『もちろん。待ってるね』

私はすぐにメールを返す。

私が祐樹の部屋に行くこともあるが、私の部屋の方が片付いていて落ち着く、と祐樹がよく言っている。

祐樹が来る、というのはイコール、する、ということでもある。

期待せずにはいられなかった。

ここ2週間くらいはお互いに仕事が忙しくて会っていなかったのもある。
私があのゲームをやってしまったのも、欲求不満のせいかもしれない。

---

思った通り、部屋に入った途端、祐樹は私を強く抱きしめてきた。

「ちょ、ちょっと」

とりあえずストップを掛ける。

「駄目なの?」

おあずけをくらっている子犬のような目で祐樹が訴えかけてくるが、まださっきファミレスで食べたハンバーグセットがこなれていない。

「先にシャワー浴びてきてもいいかな。久しぶりだし、ちゃんとしたいから」

「なら、しょうがないか。ホントは一緒に入りたいけど……」

などと、口を尖らせて呟いている祐樹を残して私はシャワーを浴びることにした。
私も一緒に入りたいとは思うのだが、一度やってみたときにすし詰め状態だったのを思い出すと勇気が出ない。

熱いシャワーを浴びながら、私はあることに気がついた。

「(あ、ゲーム!)」

思わず大声が出てしまいそうになって、慌てて口を押さえる。
あのゲームを机の上に出しっぱなしだったことに気付いたのだ。

祐樹が気が付かずにテレビでも見ていることを祈りながら、私は慌てて体を洗い流し、パジャマをひっかけて、バスルームから出た。
見られでもしたら大変だ。今日いきなり来ると言われたせいで、片付けてもいなかった。

……が、もう遅かった。

「何、これ」

祐樹はしっかりとゲームのパッケージを手に持っていた。

「え、えっと……」

突然取り上げるのも、謝るのもおかしい。
どうしていいかわからなくて、彼の手元にあるそれに、視線をやることしか出来なかった。

パッケージを見ていた祐樹が顔を上げた。私はぎくりと体を身体を硬直させる。

「もしかして、こういうことされたいの?」

「え?」

思わぬ言葉だった。

「今までのでは物足りなかったかな?」

「そんなこと……」

私は口をもごもごさせる。嫌われて、しまっただろうか。

「じゃあ、今日は縛ってあげるよ」

にっこりと祐樹が笑った。

頭の中がパニックだ。
立ちすくんでいる私に祐樹が近付いてくる。

戸惑っている私の手首を、祐樹は自分のしていたベルトで一つにまとめた。

手首を縛られた私

「痛くない?」

あ、うん、と間抜けな声で返事をすることしか出来なかった。

乱暴にされるかと思いきや、祐樹は私をベッドに優しく押し倒す。こういうところはいつもと同じだ、とちょっぴり安心する。

パジャマ越しに、祐樹が私の胸に触れてくる。
いつもより体が敏感になっている気がする。すぐに息が上がってしまう。

「もしかして、縛られるの好き?」

祐樹は意地悪く言うと、私のパジャマを脱がせ始めた。
いつも以上にゆっくりとボタンを外していく。

全部脱がされた頃には、私はもう蕩け切っていた。

「あれ、まだ触ってないのに」

祐樹にじっと見られているのに、私は恥ずかしい部分を隠すことも出来ない。
見られているだけで、そこがじんじんと熱くなるようだった。

祐樹の指が触れると、私は背中をそらせながらいやらしい声を上げてしまった。

「やぁ……っ、だめぇ……!」

私が身をよじって、指から逃れようとしても祐樹はそれを許してくれない。

「いつもと同じだよ?」

そう言いながら、更に刺激を強めてくる。

縛られていつもより感じているなんて、あのゲームに出てくるヒロインのようだ。
そう思った途端にまたどっと、愛液が溢れてしまったらしい。

「こんなになってるんだったら、もういいかな」

私を縛ったまま、祐樹は服を脱ぎ始めた。
私は何かを期待するように、太ももをもぞもぞとさせてしまう。

「このまま、いい?」

「……うん」

私は興奮を隠して、控えめに答える。そうしなければ、まるで……このままされたいみたいだから。

とうとう縛られたままで祐樹の熱いものが入ってきた。
私の中に祐樹の熱がじわりと伝わってくる。

身体の全てが蕩けてしまったようで、声も出なかった。

「すごい、えっちな顔」

祐樹が嬉しそうに私の顔をのぞき込んでくる。
顔を隠したくても、手は縛られていて動かない。

「今なら見放題だね?」

祐樹が耳元で囁く。

自分ではどうにもならない状況になっていることが、余計に私に火をつけているようだ。
中で少し動かれただけで、どうしようもないほど感じてしまう。

「ん、っ、ふふ、知らなかった」

私の中を擦りながら、祐樹が呟く。

「……え?」

息を乱しながら、なんとか私はそれだけを言う。

「こんなにやらしい子だったなんて……ね……っ」

嬉しそうに祐樹は言って、腰の動きを更に大きくする。

「っ、ばか……っ!」

私は祐樹の背中に手を回してすがりつきながら、遂にイってしまった。
それに合わせて、祐樹も私の中に熱いものを放出する。

そのまま、私は祐樹としばらく抱き合っていた。

「私も、祐樹がこんなにスケベだとは思ってなかったもん」

身体を離した後で、私は祐樹に向かって言った。

「だってしょうがないじゃん。こんなにえっちで可愛い子が、目の前にいるんだから」

祐樹が悪戯っぽく笑う。

「今度また、こういうのしてもいい?」

控え目に聞いてくる祐樹に、私は真っ赤になりながら小さく頷いてしまった。

END

あらすじ

同僚が貸してくれた成人向けゲームにハマってしまった私。
付き合っている彼がいるのに画面の中で繰り広げられる情景に興奮してしまう自分がいて…

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