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官能小説 二つの顔〜甘美な秘密〜
二つの顔〜甘美な秘密〜
純夏、30歳。
昼間の彼女は、まさに「完璧」という言葉が相応しい女性だった。
大手商社の企画部でプロジェクトリーダーを務め、切れ味鋭いプレゼンと的確な判断力で、数々の難題をクリアしてきた。
後輩からの信頼は厚く、先輩たちからも一目置かれる存在。
常に冷静沈着。どんな時も完璧な笑顔を崩すことはない。
「先輩、今日の会議も素晴らしかったです!」
「純夏さんみたいに、テキパキと仕事をこなせるようになりたいです!」
そんな言葉を聞くたびに、純夏の心には微かな優越感と、それから、昼間の自分を演じ続けることへの密かな疲労感が募っていく。
彼女は知っていた。
この「完璧な自分」は、あくまで世間に見せるための仮面なのだと。
──────
夜になり、自宅のマンションのドアを開けた瞬間、純夏はふっと息を吐き、肩の力を抜いた。
玄関には、蓮の靴が揃えて置いてある。
彼はフリーランスのデザイナーとして自宅で仕事をしているため、純夏が帰る頃には、いつも家で彼女を待っていた。
「ただいま」 「お帰り、純夏」
リビングから届く低い声に、心臓が「キュン」と跳ねる。
もう、この瞬間から「完璧なリーダー」でいる必要はない。彼の前では、ただの女に戻る。
ソファからゆっくりと立ち上がった彼は、その細い目で、こちらを上から下まで値踏みするように見つめる。
その視線だけで身体が熱くなるのを感じた。
「疲れただろ」
蓮が純夏の傍らに歩み寄り、その頬にそっと触れる。
その指先に触れるたびに、純夏の身体は熱を帯びていく。
彼の存在は、いつも純夏を非日常へと誘う特別なものだ。
この空間には、仕事の資料も、取引先の電話も、彼女を縛るものは何もない。
「うん…蓮の顔を見たら、疲れが吹き飛んだよ」
胸元に顔をうずめると、そのまま力強く抱き寄せられた。
背中に回された腕が、ゆっくりと、しかし確かな力で距離を埋めていく。
純夏の鼻腔をくすぐるのは、蓮の身体から漂う、どこか甘く、どこかスパイシーな、独特の香りだった。
純夏は、その匂いを深く吸い込むことで、今日の昼間の全てを洗い流すように、心のスイッチを切り替えていく。
蓮の手が、純夏の髪を優しく撫でる。
その指が、髪の隙間に入り込み、頭皮をゆっくりとマッサージするように動いた。
純夏は、その心地よさに思わず目を閉じる。
「いい子だ…」
蓮の低い声が、純夏の耳元で響く。
その声に、純夏の全身がとろけそうになる。
蓮の指先が、純夏の首筋をなぞり、ゆっくりと、しかし確実に、ボタンの留められたブラウスの襟元へと滑り込んだ。
純夏は、蓮の意図を察し、小さく息を呑む。
「今日は、どんな夢を見たい? 僕だけの純夏」
蓮が囁く。
「蓮に…全部、任せる…」
純夏は、震える声で答えた。
ブラウスのボタンが一つ一つ丁寧に外され始めた。
肌に触れるたびに、粟立つような感覚が走る。
純夏は、羞恥と期待が入り混じった複雑な感情に包まれながら、蓮のなすがままに身を任せた。
ブラウスが完全に脱がされると、蓮は純夏を抱き上げた。
「軽いな、純夏。もっと僕に甘えればいいのに」
「蓮に…甘えたい…」
純夏は、蓮の首に腕を回しながら、か細い声で呟いた。
蓮は、純夏を抱き上げたまま、ゆっくりとベッドルームへと向かった。
ベッドに優しく下ろされると、純夏は蓮の瞳を見上げた。
そこには、純粋な好奇心と、そして確かに自分を深く愛しているという確信があった。
蓮は、純夏の髪をそっと払いのけ、その額にキスを落とした。
「僕だけの純夏…」
蓮の声は、夜の帳のように深く、純夏の心を絡め取っていく。
蓮の手によって、純夏の服がゆっくりと剥がされていく。
スカート、そしてタイツ。
昼間、きっちりと着こなしていたスーツやブラウスは、もうどこにもない。
白いランジェリー姿になった自分は、驚くほどか弱い表情をしていた。
蓮は、ベッドサイドに置かれていた紐を手に取った。
「さあ、純夏。今日はどこまで堕ちてくれる?」
純夏の細い両腕を優しく掴み、ベッドのヘッドボードへと引き寄せる。
紐が、手首に幾重にも巻き付けられ、しっかりと結ばれていく。
奪われていく自由。
それに比例して高まる抗いがたい興奮に、熱い吐息が漏れた。
その瞬間、純夏の身体には、ある種の解放感が満ち溢れる。
抵抗するどころか、もっと深く、蓮の世界に引き込まれたいと願う自分がいた。

「蓮…っ、もっと…」 純夏は、無意識のうちに懇願していた。
蓮の指が、純夏の白い肌をなぞる。
鎖骨から胸元へ、そしてウエストへと、ゆっくりと、しかし確実に、彼の指先が這っていく。
その触れるたびに、純夏の肌は粟立ち、甘い疼きが全身を駆け巡った。
純夏は、息をすることも忘れて、ただ蓮の指先に意識を集中させる。
「どう? 僕の指先が触れるだけで、こんなに感じちゃうの?」
蓮の声が、純夏の耳元で甘く響く。
「ん…っ、蓮…やだ…でも…もっと…」
純夏は、快感に喘ぎながら、矛盾した言葉を漏らした。
「嫌なわけないでしょ? 純夏。もっと僕の前で素直になって。全部を、僕に見せて…」
蓮は、純夏の耳元で、甘く、しかし有無を言わせぬ命令を囁いた。
その言葉が、純夏の理性をさらに深く、快楽の淵へと突き落としていく。
純夏のランジェリーのストラップに指をかけ、ゆっくりとずらしていく。
純夏のデコルテが露わになり、白い肌が蓮の視線に晒される。
純夏は、羞恥心から目を閉じたが、蓮の指が触れるたびに、心臓が大きく高鳴るのを感じた。
蓮は、さらに別の紐を取り出し、純夏の胸元に絡ませ始めた。
白いランジェリーの上から、紐が胸の谷間を強調するように、美しい曲線を描く。
巧みな手つきによって、純夏の胸は一層豊かに、そして挑発的に見せつけられた。
純夏は、自分の身体が蓮によって「作品」のように扱われていることに、抗いがたい悦びを感じていた。
自由を奪われ、身体の隅々まで彼の支配下に置かれることで、純夏の心の奥底にあったマゾヒスティックな心が、最大限に刺激されていく。
「こんなに美しいのに、昼間は隠しているなんて、もったいないな」
蓮が、純夏の胸元に顔を埋めて囁いた。
「ただ、この姿も、表情も、喘ぎ声も、すべて俺のもの…誰にも渡さないよ、誰にも見せない…僕だけの純夏」
蓮は、純夏の耳元に顔を寄せ、低い声で囁いた。
「昼間の純夏を知ってる奴らは、まさかこんな姿になるとは夢にも思わないだろうね…僕の前でしか見せないこの顔…僕だけの秘密だ…」
「…蓮…」
その言葉は、純夏の心を鷲掴みにした。
蓮の言葉が、純夏を深く、深く、自分だけの世界へと引きずり込んでいく。
蓮の甘く、そして意地悪な声が、純夏の全身に電流のように駆け巡り、快感が全身を痺れさせた。
蓮は、純夏の唇にそっと触れ、そのまま深く吸い付いた。
純夏の唇は、蓮の熱に染まり、甘くとろけるようなキスが始まった。
純夏の舌が、蓮の舌に絡みつき、互いの唾液が混じり合う。
息が苦しくなるほど深く、情熱的なキスだった。
純夏は、蓮の腕に必死にしがみつき、そのキスに身を委ねた。
蓮の「いじめ」は、純夏にとって決して苦痛ではなかった。
むしろ、それは純夏の心を解き放ち、昼間の重圧から解放してくれる唯一の方法だった。
蓮の指先が触れるたびに、甘い痛みが全身を駆け巡り、純夏は意識の淵へと沈んでいく。
自由を奪われることで、純夏は身体の奥底から湧き上がる快感に溺れていった。
夜が深まるにつれて、純夏の声は甘く乱れていった。
蓮の囁きと、彼の身体が触れる感触だけが、世界の全てだった。
その時間は、まさに非日常的で、官能的な陶酔に満ちていた。
──────
翌朝、目覚めると身体が驚くほど軽く、心は澄み切っていた。
傍らで、彼が愛おしげに髪を撫で、柔らかく微笑んでいる。
「さあ、僕の優等生。また頑張ってこい」
蓮のその言葉に、純夏は力強く頷いた。
蓮との夜が、純夏に新たな活力を与えてくれた。
昼間は、完璧な「純夏」として、また社会の荒波に立ち向かっていける。
そして夜には、愛する蓮の前で、ありのままの「純夏」に戻り、深い癒しを得る。
このギャップがあるからこそ、折れずに強く生きられる。
昨夜の秘め事が心の支えであり、明日を戦い抜くための原動力だった。
純夏は、蓮に感謝の気持ちを込めてキスをした。
「ありがとう、蓮。いってきます」
蓮は、純夏の髪をくしゃっと撫でた。
「いってらっしゃい、純夏」
会社へと向かう純夏の背筋は、いつも以上にピンと伸びていた。
表情は昨日までと同じ、完璧な笑顔。
しかし、その瞳の奥には、誰にも知られることのない甘美な夜の熱が、静かに、深く秘められていた。
END
あらすじ
昼の仮面を脱ぎ、甘美な夜へ。
二つの顔を持つ女の秘密の癒しとは…









