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官能小説 【前編】この恋煮込みますか?
この作品について
この作品は、小説サイト「ムーンライトノベルズ」と合同で開催した、
「妄想小説コンテスト」の優秀賞作品です。
角煮
「角煮のなひ、ヒック……世界なんてありへなぁーーい!」
酒は飲んでも飲まれるなとよく言うけれど、この日私は相当飲まれていた。
「わりぃねぇ、ゆきこちゃん。今日こんなに出ると思わなかったんだよ」
「んもぉ〜〜大将のう〜そぉ〜つ〜きー!!」
幼稚園生並の地団駄をしてみせた。
これサービス、と言ってうずらの煮玉子を出された。これじゃない。これじゃないけどいただきます。箸で一突きして口に頬張った。
なぜ今日私がこんなに飲まれているのか。
赤提灯が昭和レトロを醸し出す『居酒屋うなちゃん』は、毎日と言っても過言ではない行きつけの店だ。社会に出るまで一滴もお酒は飲まなかったのに、社会人になってすぐにストレスが溜まり、ここに来て一人酒をするようになった。
うなちゃんの大将は私の愚痴を嫌な顔せず聞いてくれる居酒屋の父的な存在だ。
ここで発端になっている角煮だ。
うなちゃんは炭火串焼きがメインのお店だが、裏メニューで豚バラ串に使用している豚バラ肉を一日かけて煮込んだ大将お手製角煮がある。
初めてこの店に来た時、疲れ切っていた私にそっと出してくれた逸品だ。それからというもの私が毎回角煮を頼むので、角煮はゆきこちゃんのために取っておくよと言ってくれたのに今日は品切れだという。約束が違う。
「ここ二、三日ゆきこちゃん来なかったから、他のお客さんに回しちゃってたんだよ」
「しごろがぁー、忙しいんれすぅ〜〜。今日らって、五生堂(ごせいどう)の新作コスメ、の打ち合わせだったんれすけど、ヒック……相手の担当が陰険なんれす!お腹まっっっくろドS大魔王れ、担当になっれから三年!人のこといーーっつもぉ、没!没!没!っれ、いじめてくるんれすッ!でも顔はイイんれすよねェー……」
それなのに私の癒やしが……とカウンターで角煮を欲している喉にビールを流し込んだ。
五生堂(ごせいどう)は有名化粧品メーカーで、私はその商品のデザインを共同で考えているフリーランスのデザイナーだ。美大を卒業後、一度は会社に入ったが、自分のやりたいデザインを描かせてもらえず、二年で退社しフリーランスとなった。
そんな駆け出しの私を拾ってくれたのが五生堂の商品企画部の担当さんだ。こんな実績もない私を拾ってくれた担当さんを当初神のように思っていたが、彼の本性は絵に描いたようなドSであった。いつもニコニコしながらデザインに指摘をし、無理難題を言い、おどおどする私を見て楽しんでいるのだ。
顔は凄く好みなのに残念な人である。彼女とかにもあんなドSな感じなのだろうか……。
「ホント悪いねぇ、ちょうどゆきこちゃんが来る前に来たあの人が最後だったんだよ」
そう言って大将は二つ隣に座るスーツ姿の男性を指差した。お酒が回りすぎていて視界がぼやけて顔がわからない。だが私の角煮レーダーが反応している。
スーツ姿の男性は生中片手に最後の一口の角煮を箸で掴み上げ口に入れようとしたのに合わせて横から体を乗り出し”アーーン”と口を広げた。
男性は箸を止めてこちらを見た。
「…………食べかけですが、よかったら食べられますか?」
「いいんれすか?!いたらきますッ!!」
散々”待て”で焦らされて”よし”と言われてご飯に食いつく犬のように、”どうぞ”の一言を言われると素早く男性の箸に食いついた。
「お、おいひぃ〜」
一口角煮を頬張り、幸せ〜と呟くと電池切れのようにカウンターに突っ伏して眠ってしまった。
「お客さん悪いねぇ。ゆきこちゃん相当ストレス溜まっていたみたいで。いつもはこんな子じゃないんだけどね」
「ええ、知ってます」
「は?どういう……」
んん〜〜とみじろぎ、ぼんやりした記憶の中で男性を見た。
「にし、らさ……、――――」
「……」
「ん?ゆきこちゃん起きたのかい?よく聞こえないよ」
「……かく、に……」
体が宙に浮いた感じがする。私、相当酔っ払ってるんだなー。
「彼女の分も私が払いますので」
「ま、まいど」
そのまま人肌感じる揺り籠のような優しい揺れに身を任せて深い眠りについてしまった。
目が覚めたら
しばらくしてぼんやりと意識が戻ってきた。
ふかふかのベッドがきもちいい〜。手のひらでベッドを優しく撫でながら体を縮こまらせまどろんだ。
「ん?」
肌触りがいつもと違う。この高級感のある低反発性の気持ちよさは私の激安ベッドではない。

「ここって……」
目を覚まし体を起こすと見慣れない黒い革張りのソファに大型テレビ。観葉植物が部屋の隅に置かれていた。明らかに私の部屋ではない。
嗅いだことのある香水の香りがするが思い出せない。
廊下の方からシャワーの音がしていた。
「ふ、服は、着てるよね……よかった」
ソファに置かれていた私の通勤鞄を手に取り、部屋を出ようと忍び足で廊下に出た。洗面所の前を通りかかった時、シャワーの音が止み浴室の扉が開いた。
「にににに、西村さんッ!!」
酔いなんて一気に醒めた。
シャワーを浴びていたのが今日の打ち合わせの相手、五生堂の”西村恭平(にしむらきょうへい)”だった。
後退りすると廊下の壁に背中が当たり、鞄を抱えて座り込んでしまった。
「ああ、起きたんだ。川崎さんってやけ酒するタイプだったんだね」
バスタオルを頭から被ったまま私に近付いてきて、傷みのない綺麗な黒髪から滴り落ちる水滴が私の鼻を濡らした。
「あ、あの西村さん、ふ、服を着てください!」
スラッとした体で程よく筋肉もついていて、想像していた通りの体つきだった。頭から被っていたバスタオル以外は何も着ておらず目のやり場に困った。
「んー、別にこれから脱ぐことだし必要ないよ」
「え、どういう……ひゃッ」
ニコニコしながら理解が追いつかない言葉を放ち、お姫様抱っこで抱きかかえられベッドに逆戻りしてしまった。
優しくベッドに下ろされると抱えていた鞄を取り上げられた。
(この嗅いだことのある香水の匂い、西村さんのか!)
ようやく気付いた私はそのままベッドに押し倒され西村さんが覆いかぶさってきた。
「に、西村さん、何を……」
「何をって……ナニかな?」
不敵な笑みを浮かべる西村さんは悔しいけど間近に見てもカッコイイ。三十歳とは思えないほど、大人の色気が出ている。いつもはかき上げている髪が濡れているせいかぺったんこになっていて雰囲気が変わりこれがギャップ萌えというやつなのか可愛いくもある。
打ち合わせでいじめられて凹んでいたけど、本当は西村さんのことが好きだ。初めて会った日からずっと――。
他社の人なので、西村さんの情報をなかなか入手出来ず、本人に彼女はいるのか?結婚しているのか?など聞けるはずもなく、左手の薬指に指輪をしていないので結婚はされていないということしかわからない。
そんなずっと好きだった人が今、全裸で私に襲いかかろうとしている。
「川崎さんが”言った”んだからね……」
そう言って西村さんは唇を重ねてきた。
「んっんん」
触れるだけのキスから舌が閉じていた唇をこじ開け侵入してきた。
クチュクチュと唾液が混ざり合う音が部屋に響き渡る。西村さんとキスをしているなんて脳が沸騰して熱が出そうだ。
”ヂュヂュッ”と強く舌を吸いつかれ先端がヒリヒリした。
「ぷはっ」
肩で大きく息を吸った。
唇が離れるとお互いの舌先から銀色の糸が引いていた。
「ははっ。川崎さん息止めてたでしょ……鼻で呼吸してみて」
鼻のてっぺんをチョンっと人差し指でつつくとまたキスをし、先程よりも激しく上歯をなぞり口内を犯してきた。
着ていたピンクベージュのジャケットの一つボタンを取られ、背中に手を回し体を浮かされ器用に脱がされてしまった。
ブラウスのボタンにも手をかけてきたが、このまま流されちゃダメだ。
「あっ、や、西村さん待って……ッ」
「もう待てないよ。何年待ったと思ってるの?」
「え……ああッ!」
西村さんは完全にスイッチが入ってしまっているようで、制止を無視して首に吸いつきブラウスのボタンを全て外した。
キャミソールから黒いレースのブラジャーが透けていた。
「へぇ、結構エッチな下着着てるんだ」
キャミソールに手をかけブラジャーが露わになった。
下着を見られている恥ずかしさと西村さんとこんな形じゃなくてちゃんと両想いになりたかったと思うと涙が溢れてきた。
「……っふ、っ」
両手で顔を覆ったが指の隙間から涙が頬をつたった。
私の涙に気付いた西村さんは驚いて、私の上から退き優しく指で涙を拭き取ってくれた。
「ごめん川崎さん……怖がらせるつもりはなかったんだ。さっき居酒屋での君の言葉を真に受けてしまって。馬鹿だよな俺、酔った勢いだったよね」
乾いた笑いをし私にタオルケットを掛けてくれたが、いつもの腹黒さはなく、寂しそうな顔をしていた。
(居酒屋……?)
あらすじ
大手化粧品会社でデザイナーとして働くゆきこは、想い人である腹黒ドS大魔神な上司「西村」から会議でアイデアを没にされて落ち込んでいた。
行きつけの居酒屋でやけ酒をしていると…